みなさんはトレーニングの負荷はどう設定していますか?

ただトレーニングを行っているだけでしょうか。

 

「筋力を高めるなら、何回・何セットが正解なのか」

「筋肥大には、限界まで追い込む必要があるのか」

「フリーウエイトとマシンでは、どちらが効果的なのか」

「毎回プログラムを変えないと、成長は止まるのか」

レジスタンストレーニングには、数多くの方法論があります。

高重量、低重量、オールアウト、スロートレーニング、ドロップセット、
スーパーセット、血流制限、フリーウエイト、マシン、
ピリオダイゼーションなど、選択肢は増え続けています。

しかし、方法が増えるほど、何が本当に重要なのか分かりにくくなります。

2026年、American College of Sports Medicine(ACSM)は、
健康な成人に対するレジスタンストレーニング処方に関して
17年ぶりに更新しました。

今回の論文は、一つの介入研究ではありません。

137件のシステマティックレビュー、3万人以上の参加者を統合した
「Overview of Reviews」、いわゆるレビューです。


1.レジスタンストレーニングとは何か

レジスタンストレーニングとは、筋に外部抵抗を加えながら行う運動です。

抵抗には、次のようなものが含まれます。

  • バーベル

  • ダンベル

  • トレーニングマシン

  • ケーブル

  • ゴムバンド

  • 自体重

  • パートナーによる抵抗

  • 空気圧・油圧式機器

筋力トレーニングやウエイトトレーニングという言葉が使われますが、
レジスタンストレーニングはより広い方法を含む概念です。

目的も筋力向上だけではありません。

  • 最大筋力

  • 筋肥大

  • 筋パワー

  • 筋持久力

  • 収縮速度

  • バランス

  • 歩行速度

  • 椅子からの立ち上がり

  • 階段昇降

  • その他の身体機能

今回のACSMポジションスタンド
(米国スポーツ医学会ACSMが発表する公式の意見書やガイドライン)
では、これらの能力にトレーニング処方の違いが
どう影響するかを検討しています。


2.今回の論文は何を調べたのか

この研究は、ACSMが2009年に発表した
「健康な成人に対するレジスタンストレーニングの進行モデル」
を更新する目的で実施されました。

対象となったレビューの条件は、主に次のとおりです。

  • 18歳以上の健康な成人

  • 6週間以上のレジスタンストレーニング

  • トレーニング期間は6〜52週間

  • 無運動群または異なるトレーニング方法との比較

  • 筋力、筋量、筋機能、身体パフォーマンスを評価

  • ランダム化比較試験を統合したシステマティックレビュー

最終的に、137件のシステマティックレビュー、
3万人以上の参加者のデータがまとめられました。

検討された主なトレーニング変数には、次の項目があります。

  • 使用重量

  • セット数

  • 週間頻度

  • 週間ボリューム

  • 可動域

  • 動作速度

  • 種目順

  • 反復限界まで行うか

  • フリーウエイトかマシンか

  • 単関節種目か多関節種目か

  • セット構成

  • 筋緊張時間

  • 血流制限

  • ピリオダイゼーション

  • エキセントリック負荷

  • オリンピックリフト


3.最も重要なのは「完璧な方法」ではなく、実施すること

今回のレビューでは、
レジスタンストレーニングを行わない場合と比較して、
トレーニングを行うことで次の項目が改善しました。

  • 筋力

  • 筋肥大

  • 筋パワー

  • 筋持久力

  • 筋収縮速度

  • 歩行速度

  • バランス

  • 複数の身体機能

方法の違いによって効果の大きさが変わる項目はありましたが、
多くの処方変数は結果へ一貫した影響を与えていませんでした。

つまり、

合理的な方法で継続できているなら、
多くのレジスタンストレーニングは有効

これは「何をしても同じ」という意味ではなく、
筋力、筋肥大、パワーなど、目的を明確にした場合には、
効果を高める可能性があるものが存在します。

一方で、細かな方法にこだわりすぎて実施頻度が下がったり、
プログラムが複雑になりすぎると、本来の目的から外れてしまいます。


4.筋力を伸ばすために重要な条件

最大筋力とは、特定の動作で発揮できる力の上限です。

今回のレビューでは、筋力向上を高める可能性がある条件として、
次の項目が示されました。

筋力向上を狙う処方
使用重量:80%1RM以上
セット数:1種目2〜3セット
頻度:週2回以上
可動域:原則としてフルレンジ
種目順:優先種目をセッション前半に行う

・高重量が有利になる

低重量でも筋力は向上します。

しかし、最大筋力をより大きく改善する目的では、
80%1RM以上の高重量が有利でした。

80%1RMは、一般的には約8〜10回前後反復できる重量に相当します。
ベンチプレスは8回、スクワット・デッドリフトは10回のイメージです。

高重量が有利になる理由として、次の可能性があります。

  • 最大筋力測定とトレーニング負荷の特異性

  • 高閾値運動単位の動員

  • 高い筋張力への適応

  • 動作技術と神経系の適応

  • 重量に対する心理的・運動学的な慣れ

ただし、初心者や高齢者、疼痛がある対象者に、
初回から80%1RM以上を使用する必要はありません。

まず安全に反復できる負荷から開始し、
技術と組織耐性に応じて段階的に高負荷へ移行します。

2〜3セットが有利になる

1セットでも、何もしない場合と比較すれば筋力は向上します。

一方、筋力向上を最適化する場合には、
1種目あたり2〜3セットが有効でした。

ただし、すべての種目を3セット行う必要はありません。

メイン種目を2〜3セット、補助種目を1〜2セットにするなど、
目的とトレーニング時間に応じて調整できます。

優先種目は最初に行う

セッション前半に行った種目は後半に行った種目より
大きな筋力向上を得やすい傾向があります。

これは、疲労が少ない状態で高い負荷と出力を
発揮できるためと考えられます。

たとえば、スクワットの最大筋力を高めたい場合は、
次のように配置します。

  1. スクワット

  2. ルーマニアンデッドリフト

  3. スプリットスクワット

  4. レッグカール

  5. カーフレイズ

私は股関節をうまく使えるように刺激を入れたい場合は、
先にルーマニアンデッドリフト行うことも考えています。
「大筋群から小筋群へ」という決まりよりも、
最も改善したい種目を前半に置くことが重要と考えられます。


5.筋肥大を決めるのは、重量より週間ボリューム

筋肥大とは、主に筋線維の断面積が増加し、筋の大きさが増すことです。
(筋原繊維は増加しますが、筋繊維は増加しません)

今回のレビューでは、筋肥大を高めるうえで、特に次の2項目が重要でした。

  • 週10セット以上

  • エキセントリックでの負荷

筋肥大は幅広い重量で起こる

筋肥大は、高重量だけで起こるわけではありません。

十分な量が確保されていれば、比較的軽い重量から高重量まで、
幅広い負荷で筋肥大が起こります。

そのため、「筋肥大は8〜12回だけ」と考える必要はありません。

その人が安全に高い努力度を確保でき、
十分な週間ボリュームを継続できる回数帯を選択します。

週10セット以上が一つの目安

今回のレビューでは、
1筋群あたり週10セット以上のボリュームが筋肥大を高めました。

たとえば大胸筋であれば、

  • 月曜日:ベンチプレス3セット、ダンベルフライ3セット

  • 木曜日:ダンベルプレス3セット、ケーブルフライ2セット

合計11セットとなります。

ただし、週10セットは全員が初日から行う最低条件ではありません。

初心者、長期休止後、高齢者、筋肉痛が出やすい人は、
週4〜6セットでも十分に改善する可能性があります。

まず回復できる量から開始し、停滞と回復状態を確認しながら増やします。

エキセントリックでの負荷

エキセントリック収縮とは、
筋が力を発揮しながら引き伸ばされる局面です。

スクワットでは下降局面、
ベンチプレスではバーを胸へ下ろす局面が該当します。

エキセントリックオーバーロードは、
挙上局面より下降局面で大きな負荷を加える方法です。

筋肥大を高める可能性があり、強い筋肉痛や筋損傷も起こしやすいです。


6.パワー向上には「速く動かす」

筋力とパワーは同じではありません。
筋力は発揮できる力の大きさ、パワーは力と速度の積です。

どれだけ重い重量を挙げられても、短時間で加速できなければ、
高いパワーを発揮できるとは限りません。

今回のレビューではパワー向上を高める方法として、
次の項目が示されました。

使用重量:主に30〜70%1RM
動作意図:コンセントリック局面を最大限速く
ボリューム:低〜中等量
種目:パワートレーニング、オリンピックリフト

重要なのは、実際の動作速度だけではなく、

可能な限り速く動かそうとする意図

高重量では、見た目の挙上速度は遅くなります。

それでも、最大限速く挙げようとすることで、
高い神経出力を要求できます。

30〜70%1RMをどう使い分けるか

  • 30〜40%1RM:速度を重視しやすい

  • 40〜60%1RM:力と速度のバランスを取りやすい

  • 60〜70%1RM:力優位のパワーを狙いやすい

ただし、最適負荷は種目によって異なります。

ジャンプスクワット、クリーン、ハイプルなどありますが
その顧客の能力によって選択する必要があります。

また、アスリートでは競技動作の接地時間、必要な力、
速度特性に合わせて処方する必要があります。

ボリュームを増やしすぎない

パワートレーニングでは、筋肉を疲労させることもですが、
神経系の適応を促し高い出力を反復することが優先されます。

論文では低〜中等量、概ね1種目24回以下の総反復数
パワー向上に有利な目安として示されています。

例としては、

  • 3回×4セット=12回

  • 4回×4セット=16回

  • 3回×5セット=15回

  • 5回×4セット=20回

ただし、24回を超えた瞬間に効果がなくなるわけではなく、
速度、ジャンプ高、出力、技術が低下とともに終了することが重要です。


7.オリンピックリフトは何に有効なのか

今回のポジションスタンドでは、オリンピックスタイルの
ウエイトリフティングがパワー向上を高める方法として示されました。

具体的には、

  • クリーン

  • スナッチ

  • ジャーク

  • ハングクリーン

  • パワークリーン

  • クリーンプル

  • スナッチプル

  • ハイプル

などが該当します。

これらは、比較的大きな力を高い速度で発揮し、
挙上終盤まで加速できる特徴があります。

一方で、

パワー向上には必ずオリンピックリフトが必要

という結論ではありません。

ジャンプ、スロー、スプリント、バリスティック運動でも
パワーは向上します。

オリンピックリフトを導入するかどうかは、次の条件から判断します。

  • 対象者の目的

  • 指導者の技術

  • 習得に使える時間

  • 手関節・肩関節・股関節・足関節の状態

  • 安全に減速・キャッチできるか

  • 他の種目より高い費用対効果があるか

キャッチ技術の習得に時間がかかる場合は、
クリーンプルやハイプルなどのプル系種目が現実的です。


8.限界まで追い込む必要はあるのか

今回のレビューでは、瞬間的筋疲労、いわゆる反復できなくなるまで行う
トレーニングは、筋力・筋肥大・パワーを一貫して高めませんでした。

つまり、毎セット限界まで行うことは必須ではありません。

限界まで行うと、次の問題が生じる可能性があります。

  • 反復速度の低下

  • 技術の崩れ

  • セット間の回復低下

  • 次の種目の質低下

  • 筋肉痛の増加

  • セッション後半のボリューム低下

  • 競技練習への疲労持ち越し

筋力や筋肥大では、
限界の2〜3回手前でも十分な刺激を得られる可能性があります。

現場ではRIRを使用すると管理しやすくなります。
RIRとはセットを終えた時にあと何回反復できるかの指標で、
もう1回も上げることができない場合は、、、RIR0
あと1回上げられる場合は、、、、RIR1
あと2回上げられる場合は、、、、RIR2
となります。

筋力・筋肥大では、主にRIR1〜3程度を基本とし、
必要に応じて一部のセットのみRIR0まで行う方法が現実的です。

パワー種目では、限界まで反復するのではなく、
明らかな速度・出力低下が起こる前に終了します。

特に低負荷で筋肥大を狙う場合は、
ある程度限界に近づく努力度が必要になると考えられます。

 


9.フリーウエイトとマシンは、どちらが優れているのか

今回のレビューでは、器具の種類が全体的なトレーニング効果へ
一貫した影響を与えていませんでした。

つまり、健康な成人が筋力や筋肥大を得るために、
必ずバーベルを使用する必要はありません。

  • フリーウエイト

  • マシン

  • ゴムバンド

  • 自体重

  • 自宅トレーニング

いずれも有効です。

ただし、他の面で違いがあります。
たとえば、バーベルスクワットはレッグプレスよりもバランスを取り、
脊柱に重量分の負荷がかかるので体幹機能は向上する可能性があります。
そのため、アスリートや動ける体つくりを行うかたは実際にバーベルを
用いてトレーニングを行った方が良いと私は考えています。

 

マシンが適しやすい対象者

  • 初心者

  • バランス能力が低い人

  • 特定の筋へ負荷を集中したい人

  • 疼痛や可動域制限がある人

フリーウエイトが適しやすい対象者

  • フリーウエイト種目の筋力を高めたい人

  • 多関節の協調性を高めたい人

  • アスリート

  • バーベル競技を行う人

  • 自由度の高い負荷方向が必要な人

「どちらが優れているか」ではなく、「何を改善したいか」で選択します。


10.フルレンジは常に正解なのか

筋力向上については、完全な可動域を使うトレーニングが有利でした。

フルレンジには、次の利点があります。

  • 広い関節角度で筋力を獲得できる(どの角度でも力をかけられる)

  • 筋が長い位置で負荷を受ける(張力をかけられる)

  • 動作全体のコントロールを学習できる

  • 日常生活や競技で必要な可動域へ対応しやすい

しかし、すべての対象者に同じ可動域を強制するべきではありません。

可動域は次の条件によって調整します。

  • 疼痛

  • 手術後の制限

  • 組織治癒

  • 関節不安定性

  • 競技特異性

  • 骨形態

  • 技術

  • 目標とする関節角度

たとえば、疼痛がある対象者では、無痛範囲の部分可動域から開始し、
症状を確認しながら広げることがあります。

また、競技の特定角度で高い力を発揮する必要があれば、
フルレンジを基本としながら、部分可動域を追加する選択肢もあります。


11.スロートレーニングや筋緊張時間は重要か

筋肥大では、「筋を何秒間緊張させたか」が重視されることがあります。

しかし今回のレビューでは、筋緊張時間や特定の反復テンポが、筋力・筋肥大を一貫して高めるとは示されませんでした。

これは、動作速度が無意味という意味ではありません。

動作速度は、次の目的に応じて調整します。

  • 技術習得

  • 疼痛管理

  • 関節位置のコントロール

  • エキセントリック負荷

  • パワー向上

  • リハビリテーション

  • スポーツ動作への転移

筋肥大のためにすべての反復を極端にゆっくり行う必要はありません。

そのため、動作が綺麗にできているかでスピードを判断し、
パワー向上の目的がある場合はその目的に合わせて速度をあげる
ことが最適なのではないかと思います。


12.ピリオダイゼーションは不要なのか

今回のレビューでは、ピリオダイゼーションが健康な成人の
筋力・筋肥大・身体機能を一貫して高めるとは示されませんでした

ただし、これは「計画性が不要」という意味ではありません。

ピリオダイゼーションには、次の役割があります。

  • 負荷とボリュームの管理

  • オーバーユースの予防

  • 複数能力の優先順位づけ

  • 試合へ向けたピーキング

  • 長期間のモチベーション管理

  • 疲労と回復の調整

健康増進を目的とする一般成人では、
複雑な周期化を行わなくても十分な成果を得られます。

一方、競技スケジュールを持つアスリート、最大筋力を競う選手、
年間を通して複数能力を伸ばす必要がある選手では、
ピリオダイゼーションの実務的価値は残ります。

今回の研究対象は健康な成人でありアスリートにおける
ピーキングの有効性を否定するものではありません。


13.血流制限トレーニングは必要か

いわゆる加圧トレーニングです。
血流制限トレーニングは四肢の近位部をカフで圧迫し
比較的低負荷で運動する方法です。

今回のレビューでは通常のレジスタンストレーニングを
上回る効果は一貫して認められませんでした。

したがって、健康な成人が高負荷トレーニングを安全に行える場合、
血流制限を標準的に使用する必要はありません。

一方で、次のような状況では選択肢になります。

  • 高負荷を扱えない術後

  • 関節への絶対負荷を下げたい

  • 疼痛によって高重量が困難

  • 筋萎縮を抑えたい

  • 長期間の免荷がある

ただし、循環器疾患、血栓リスク、血圧管理、皮膚状態などを確認し、
適切なカフ圧を設定する必要があります。

「通常トレーニングより優れていない」ことと、
「臨床的な用途がない」ことは同義ではありません。


14.目的別に簡単にまとめるとどうなるか

最大筋力:
・80%1RM以上
・2〜3セット
・週2回以上
・フルレンジ
・優先種目を前半毎セット
・RIRは2~3で良い
筋肥大:
・1筋群週10セット前後以上
・十分な努力度
・継続可能な負荷8〜12回への固定
・RIRは2~3で良い
パワー:
・30〜70%1RM
・最大速度で行う意思を持って行う
・低〜中等量
・十分な休息疲労困憊


15.アスリートにはそのまま当てはめられない

今回のポジションスタンドの対象は、18歳以上の健康な成人です。

アスリートも健康な成人に含まれ、人間としての構造は同じですが、
アスリートはさまざまな因子が関わってきます。

アスリートでは、次の追加要因を考慮する必要があります。

  • 競技練習量

  • 試合スケジュール

  • ポジション

  • 競技動作の接地時間

  • 力–速度特性

  • 左右差

  • 外傷歴

  • 技術練習への疲労持ち越し

  • 年間計画

  • 競技KPI

たとえば、筋肥大目的では週10セット以上が有利でも、
シーズン中の選手に多量のセットを追加すると、
競技練習の質を低下させる可能性があります。

一般成人にとっての「最大効果」と、アスリートにとっての
「競技を含めた最適解」は同じではありません。


16.禁忌・延期・変更が必要な状態

今回のポジションスタンドは、健康な成人を対象としています。

次の状態では、一般的な処方をそのまま使用せず、医療的評価や運動内容の変更が必要です。

  • 胸痛、失神、原因不明の強い息切れ

  • コントロールされていない高血圧

  • 急性の心血管・呼吸器疾患

  • 発熱や急性感染症

  • 急性期の筋・腱・靱帯損傷

  • 骨折または骨癒合不全

  • 術後で負荷制限がある

  • 強い腫脹・疼痛

  • 進行性の神経症状

  • 高負荷で症状が悪化する

  • 安全な姿勢を保持できない

  • 医師から最大努力運動を制限されている

疼痛がある場合は、「痛みがあるから筋力トレーニング禁止」と
一律に判断するのではなく病態、組織治癒、負荷反応を評価して、
重量、可動域、速度、種目を変更します。

そのためにお客様とのコミュニケーションは大切です。
トレーニング前の問診や評価なしでは安全なトレーニングを提供できません


20.この論文の限界

多数のシステマティックレビューを統合している点は大きな強みです。

一方で、元となるレビュー間には、
対象者、介入方法、評価項目、研究の質に違いがあります。

レビューを統合したからといって、
すべての結論の確実性が同じになるわけではありません。

健康な成人が対象

疾患、手術後、急性外傷、重度の虚弱者に対する
処方を直接示したものではありません。

リハビリテーションでは、
病態、組織治癒、疼痛、医学的リスクを優先します。

介入期間は6〜52週間

複数年にわたる長期的な適応や、
競技者の年間計画については十分に説明できません。

エリートアスリートへの外挿

一般成人の筋力・筋肥大に対する結論を、競技者のピーキングや
競技成績へそのまま置き換えることはできません。

「一貫した差がない」は「完全に同じ」ではない

オールアウト(RIR0)、加圧、ピリオダイゼーション、セット法などが、
一切影響しないと証明されたわけではありません。

対象者、目的、トレーニング歴によって有用になる可能性はあります。

今回の結果は、健康な成人全体で見た場合に、
明確で一貫した追加効果が確認されなかったという意味です。


21.まとめ

今回のACSMポジションスタンドから得られる最大のメッセージは、

目的に合ったレジスタンストレーニングを継続することが重要

ということです。

一般の方のトレーニングサポートを行う際の要点を整理すると、
次のようになります。

  • レジスタンストレーニングは筋力、筋肥大、パワー、身体機能を改善する

  • まず全身の主要筋群を週2回以上トレーニングする

  • 最大筋力には80%1RM以上の高負荷が有利

  • 筋力目的では1種目2〜3セットが目安

  • 優先種目はセッション前半に行う

  • 原則としてフルレンジを用いる

  • 筋肥大には1筋群あたり週10セット前後以上が有利

  • 筋肥大は幅広い重量で起こる

  • パワーには30〜70%1RMを最大限速く動かす方法が有効

  • パワー種目は低〜中等量とし、疲労による出力低下を避ける

  • オリンピックリフトはパワー向上の有効な選択肢

  • 毎セット限界まで行う必要はない

  • フリーウエイト、マシン、ゴムバンド、自体重はいずれも有効

  • 複雑なピリオダイゼーションや特殊なセット法は必須ではない

  • 一般成人とアスリートの最適解は分けて考える

トレーニング処方では、
研究上わずかに優れた方法を探すだけでは不十分です。

その方法を、

  • 安全に行えるか

  • 継続できるか

  • 回復できるか

  • 目的に合っているか

  • 実際に成果が出ているか

まで確認する必要があります。

最も高度なプログラムより、目的が明確で、継続でき、
段階的に負荷を高められるプログラムの方が、
現場では大きな成果につながります。