「スクワットをすると膝が痛い」
「膝を前に出さないように教わったけれど、かえって動きにくい」
「フォームを直しているつもりなのに、まだ痛い」

 

私がパーソナルトレーニングをしていると、
普段、階段の昇段後段で膝が痛いので解決したいという方や、
前のジムやリハビリで膝が痛くなったという方がいらっしゃいます。

 

スクワットは下半身をバランスよく鍛えられる代表的なトレーニングです。
一般の方の体力づくりからアスリートの筋力強化、
さらに術後のリハビリテーションまで、幅広く用いられています。

 

一方で、スクワットを続けるなかで、
膝の痛み、股関節の詰まり、腰の痛みが出る人もいます。
 

今回は膝について焦点を当てていきます。

結論から言えば、スクワットそのものが膝に悪いわけではありません。

痛みの原因は様々ですが膝の痛みがある人にみられやすい
3つの動作に絞って解説します。
運動初心者も必見です。

  1. 膝が内側へ入る

  2. 膝が前へ出すぎる

  3. 立ち上がりで膝を伸ばしきる

この3つの動きが見えたからといって、
それだけで痛みの原因と断定することはできません。

 

「見た目を直せば治る」という単純な話ではなく、
最終的にはなぜその動きになっているのかを考える必要があります。


スクワットでは身体に何が起きているのか

スクワットの
下降局面では、主に股関節・膝関節・足関節が同時に曲がり、
上昇局面では、股関節・膝関節・足関節が同時に伸展します。

 

このとき、重心とバーベルを足部の支持基底面上に保つために、
身体は次の要素を調整しています。

  • 股関節と膝関節をどの程度曲げるか

  • 膝をどこまで前へ移動させるか

  • 体幹をどの程度前傾させるか

  • 足部のどこで床を捉えるか

  • 左右の脚へどのように荷重するか

つまり、スクワットは「膝だけの運動」ではありません。
股関節・膝関節・足関節・体幹が役割を分担する、全身運動です。

 

2024年のバイオメカニクスレビューでもスクワット中の関節負荷は、
深度、足幅、つま先の角度、体幹前傾、バー位置、踵の高さ、重量、速度
によって変化すると整理されています。

 

そのため、全員に共通する「唯一の正しいフォーム」はなく、
その方の骨盤の大きさ、頚体角、足の長さ、可動域などによって
フォームを多少変化、動作の指導をする必要があります。
ヒトの身体はみんな同じではないことを念頭におく必要があります。


膝の痛みは、なぜ起こるのか

膝前面に痛みがある場合、候補の一つが膝蓋大腿関節痛です。

スクワットが深くなると膝屈曲角度の増加に伴って膝伸展モーメントや
膝蓋大腿関節圧力が大きくなりやすくなります。


特に膝屈曲60〜90度付近では、症状が再現される人がいます。

ただし、これは「深くしゃがむと膝が壊れる」という意味ではありません。

 

2024年のレビューでは、
適切な技術と段階的な負荷設定のもとで行う深いスクワットは、
健常なトレーニング経験者の膝関節構造に悪ではないとされています。
(つまり、深くても負荷が適切に進められれば問題ないってことです)

 

反対に、浅いスクワットなら必ず安全とも限りません。
先ほどあげた不良動作によってさらに負荷が集中してしまうため、
疼痛が出現する可能性が高いとされています。


膝が痛い人にみられやすい3つの動作

私がパーソナルトレーニングをしていると、

 

「以前、別のところでスクワット指導されてから痛くなった」

「日常生活では階段で痛い」

「普段は大丈夫だけれど、スクワットだけ痛い」

という方が来られます。

 

そのとき、私は痛い場所だけを見るのではなく、
スクワットで股関節・膝関節・足関節をどう使っているか確認します。

ここからは、現場でよく確認する3つの動作を紹介します。


① 膝が内側へ入る

スクワットの下降や切り返しで、
膝が足に対して内側へ移動する動きです。

 

この動きには、膝関節だけでなく、次のような要素が関係します。

  • 股関節の内転・内旋

  • 骨盤と体幹の傾き

  • 足部の回内

  • 左右の荷重差

  • 重量や疲労

  • 痛みを避けるための代償

膝蓋大腿関節痛のある人では、
片脚スクワット中の股関節内転が大きい傾向を示した研究があります。

 

見た目だけを直そうとして、

「膝をもっと外へ!」

と強く押し続けるのは慎重であるべきです。


今度は足部外側へ荷重が偏り、別の動きに置き換わることがあります。

現場では、膝の位置だけでなく、

  • 膝と第2〜3趾の方向がおおむね一致しているか

  • 足底が床から浮いていないか

  • 骨盤が片側へ移動していないか

  • 重量を下げると変わるか

  • 足幅やつま先角度を変えると変わるか

  • 股関節を使う練習後に変化するか

を確認します。


② 膝が前へ出すぎる

この項目は、最も誤解されやすい部分です。

まず、膝が前へ出ること自体は悪い動作ではありません。

深くしゃがむには、膝がある程度前へ移動する必要があります。
 

身体の比率や足関節可動域によっては、
つま先より前へ出ることが自然な人もいます。

 

2003年の研究では、膝をつま先より前へ出さないよう制限すると
膝関節トルクは減少した一方、股関節トルクが大きく増加しました。
 

つまり、膝の負担を減らした分が消えるのではなく、
股関節や体幹側へ移る可能性があります。

問題は「膝がつま先より前に出たか」ではなく、

  • 股関節も同時に曲がっているか(個人的にかなり重要!)

  • 踵や足部が安定しているか

  • 痛みが出る深さ・重量・反復数になっていないか

  • 体幹を過度に起こす指示によって、膝優位になっていないか

膝前面痛がある人では、一時的に重量や深度を下げたり、
股関節をより使うスクワットへ変更したりすることで
症状が軽くなる場合があります。

 

ただし、これは膝を永久に前へ出さないためではありません。
症状を落ち着かせた後は、必要に応じて膝が前へ移動する動きにも
段階的に耐えられるように戻していきます。

 

リハビリでは膝を前に出さないように指導するあまり、
股関節に負担が集中したり、膝の筋力が回復しない例もあります、、


③ 立ち上がりで膝を伸ばしきる

スクワットの最上部で、膝を勢いよく伸ばしきり、
関節へ「ガツン」と乗るような動きです。

 

ここも、膝が完全伸展すること自体が悪いわけではありません。
日常生活でも競技でも、膝を伸ばす能力は必要です。

確認したいのは、

  • 勢いだけで伸展へ入っていないか

  • 股関節と膝関節が同時に伸びず、膝だけ先に伸びていないか

  • 最上部で骨盤を過度に前へ押し出していないか

  • 疲労とともにコントロールが失われていないか

  • もともと過伸展や術後の制限がないか

この動作と一般的なスクワット中の膝痛を直接結びつける研究は、
他の2項目より乏しいのが現状です。
しかし、臨床や現場で感じるのは膝を勢いよく伸ばし切ってしまうと
膝の前面の脂肪体がつまり圧迫ストレス、後面が伸ばされ伸張ストレスが
加わり痛みを引き起こすことがあります。

 

「最後は膝を少し曲げたままにしてください」
という指導はしないようにしたいところです。
骨盤のコントロールができるように運動指導が必要になってきます。


不良動作の原因は、本当に膝なのか

ここまで紹介した動きがあると、「膝が悪い」と考えたくなります。
しかし実際には、膝だけが原因とは限りません。

 

私が現場でよくみるのは、
股関節が十分に仕事をしないぶん、膝へ仕事が集中しているケースです。

 

イメージとしては、職場に働かない人がいると、
働く人へ仕事が集中するのと同じです。
股関節が担当するはずだった仕事まで膝が引き受ければ、
膝の負担が増えることがあります。

 

ただしより正確には、
股関節だけでなく足関節、足部、体幹、負荷量、疲労なども関係します。

だからこそ、

「膝が痛いから、膝だけを鍛える」

では不十分な場合があります。

全身の動きの中で、どこに仕事が集中しているかを見る必要があります。


獲得したいことは「ヒップヒンジ」と「骨盤の動き」

股関節を使う感覚が乏しい方には、ヒップヒンジを練習します。

ヒップヒンジとは、膝だけを大きく前へ動かすのではなく、
股関節を後方へ引きながら、股関節を曲げ伸ばしする動作です。

 

ただし、「スクワットを完全な股関節主体に変える」ことが最終目標ではありません。

スクワットでは膝関節の仕事も必要です。
 

狙いは、膝を使わなくすることではなく、
膝へ偏りすぎた負担を股関節にも分担させることです。

そこで、私が指導してきた中で効果を感じることが多い種目が、

ルーマニアンデッドリフト(RDL)

RDLは、膝の曲げ伸ばしを比較的小さく保ちながら、
股関節の屈曲伸展・骨盤の動きを学びやすいトレーニングです。

 

しかし、RDLは形を真似するだけなら簡単でも、
本当に狙った動作ができているかを判断するのは簡単ではありません。

  • 腰ではなく股関節が動いているか

  • 膝が前後に動きすぎていないか

  • 背中で重量を持ち上げていないか

  • 足底(踵)で床を捉えられているか

  • 地面を押せているか

  • 重心がつま先や踵へ偏っていないか

  • ボトムでハムストリングスと臀筋に張力を感じられるか

  • 股関節と膝関節を伸ばすタイミングが合っているか

  • 上半身優位の引き動作になっていないか

注意点を挙げれば、かなり多くなります。

 

トレーナーには、RDLを知っているだけでなく、
お客様ごとに異なるエラーを見つけ適切な言葉と負荷で
修正する力が求められます。

 


膝が痛いときの確認手順

スクワットで膝の痛みが出た場合は、
フォーム修正から始める前に、
まず症状の再現条件を確認します。

1.痛みの条件を整理する

  • 膝の前・内側・外側・後ろのどこが痛いか

  • どの深さで痛いか

  • 下降・切り返し・上昇・立ち切りのどこで痛いか

  • 終了後や翌日に悪化するか

2.動作を確認する

  • 膝が内側へ入っていないか

  • 膝の前方移動が本人の耐容量を超えていないか

  • 立ち上がりで勢いよく膝へ乗っていないか

  • 股関節と足関節が動いているか

  • 足底が安定しているか

  • 疲労後に左右差が増えないか

個人的には負荷を下げたところで、
お客様の動作が変わっていなければ
疼痛改善に関しては意味がないと思っています。


なので、痛いから重量を軽くするのではなく
動作を見直して、修正することが必要不可欠と思っています。


まとめ

スクワットで膝が痛くなると、
「膝が前に出たから」「膝が内側へ入ったから」と、
目に見える一つの動きだけを原因にしがちです。

しかし、実際の痛みはもっと複雑です。

  • 病態

  • スクワットの深さ

  • 股関節・膝関節・足関節の役割分担

  • 足幅、つま先角度、体幹角度

  • 疲労と回復

これらの組み合わせによって、膝への負担は変わります。

今回確認した3つの動作は、

  1. 膝が内側へ入る

  2. 膝が前へ出すぎる

  3. 立ち上がりで膝を勢いよく伸ばしきる

そして、股関節が十分に使えていない場合は、
ヒップヒンジを獲得し膝へ集中していた仕事を股関節へ分担させます。

その練習として有効な選択肢が、ルーマニアンデッドリフトです。

 

下の記事ではRDLについて、
フォームだけでは分からない指導のポイントまでかなり詳しく
現場で即実践できるレベルで解説します。

 

「やっているつもり」から「本当に股関節を使える」へ進みたい方は、
RDL の記事を読んでみてください。

 

膝の痛みに悩まされず、
目的に合ったスクワットを続けるための一歩になるはずです。