「パーソナルトレーニングでケガをした」というニュース

最近、「パーソナルトレーニング中に利用者がケガをした」
というニュースが大きく取り上げられました。

パーソナルトレーニングは
「健康になるため」
「ダイエットを成功させるため」
「痛みを改善するため」
など、身体をより良い状態へ導くサービスです。

しかし、その一方で、
トレーニング中の骨折や筋・腱の損傷、神経障害などの事故が報告され、
国民生活センターや行政も注意喚起を行うようになっています。

このニュースを見て、
多くの方がこんな疑問を持ったのではないでしょうか。

  • パーソナルトレーニングって危険なの?

  • トレーナーが悪いの?

  • 初心者でも安心して通えるの?

  • 良いトレーナーはどうやって見分ければいいの?

私は理学療法士として医療現場で患者さんのリハビリに携わり
現在はパーソナルトレーナーとしても活動しています。

だからこそ、このニュースを
「トレーナーが悪い」「利用者にも問題がある」
といった単純な話では終わらせたくありませんでした。

そこで今回は、ニュースだけで判断するのではなく
実際の研究論文や公的資料をもとに

「パーソナルトレーニングではどのようなケガが多いのか」
「事故はなぜ起こるのか」

について整理してみたいと思います。


パーソナルトレーニングで本当に事故は増えているのか?

まずは事実を確認します。

国民生活センターには、パーソナルトレーニング中の事故や
健康被害について複数の相談が寄せられています。

報告されている内容には、

  • 腰を痛めた

  • 肩を痛めた

  • 骨折した

  • 筋肉や腱を損傷した

  • 神経症状が残った

などがあります。
もちろん、利用者数が増えれば事故件数も増える可能性があります。

そのため、
「事故件数が増えた=パーソナルトレーニングは危険」と
結論づけることはできません。

しかし少なくとも、

安全管理について社会全体が改めて考える段階に来ている

ことは間違いないでしょう。


文献では、どこのケガが多いのか?

ニュースだけでは、「どのようなケガが多いのか」は分かりません。

そこで、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)や
フィットネス施設での傷害を調査した研究を見てみると、
比較的一致した結果が報告されています。

多くの研究で頻度が高い部位は、

① 腰

② 肩

③ 膝

です。

これは意外に思う人もいるかもしれません。

「スクワットをすると膝を痛める」というイメージを持つ人も多いですが、

実際には腰や肩のトラブルも非常に多く報告されています。

つまり、

重量を扱うトレーニングでは
身体全体を適切にコントロールする能力が求められる

ということです。


「知識不足のトレーナー」が原因なのか?

SNSでは、

「知識のないトレーナーが増えた」

「誰でもトレーナーを名乗れるから危ない」

という意見も多く見られます。

確かに、日本では国家資格がなくても
パーソナルトレーナーとして活動すること自体は可能です。

一方で、今回調べた文献では、

「知識不足だけが事故の原因である」
と断定できる研究は見つかりませんでした。

事故は、

  • 負荷設定

  • フォーム

  • 既往歴

  • コミュニケーション

  • 利用者の体力

  • 疲労状態

  • 評価不足

など、複数の要因が重なって発生すると考えられています。

つまり、

「経験が浅いから事故が起きる」のではなく、
安全管理が十分に行われなかった結果として事故につながるケースが多い

という見方の方が、現在のエビデンスには近いと言えます。


ニュースだけでは見えてこない、本当の問題

今回ニュースを見ていて、私が最も気になったのは、

「事故が起きた」

という結果ばかりが報道され、

なぜ事故が起きたのか

については、あまり深く議論されていないことです。

例えば、

  • 初回に身体の評価は行われていたのか

  • 過去のケガは確認されていたのか

  • 重量設定は適切だったのか

  • 利用者は痛みを訴えていなかったのか

  • 疲労や睡眠状態は確認していたのか

これらが分からなければ、本当の原因は見えてきません。

事故を減らすためには、

「誰が悪いか」

ではなく、

「どのような仕組みなら事故を防げるのか」

という視点が必要だと私は考えています。


まとめ

今回のニュースをきっかけに文献や公的資料を調べてみると
パーソナルトレーニング中の事故は決して無視できない課題である一方で
その原因は「知識不足」という一言では説明できないことが分かりました。

腰・肩・膝のケガが多いことは多くの研究で共通していますが
その背景には、負荷設定、評価不足、フォーム、コミュニケーションなど、
さまざまな要素が関係しています。

では、事故を防ぐために本当に重要なのは何なのでしょうか。

また、利用者はどんなトレーナーを選べば安全なのか。

そして、トレーナー自身は何を学び、
どのような評価や指導を行うべきなのか。

「事故が起こる本当の理由」
「安全なパーソナルトレーニングのために必要なこと」
について考える必要がありそうです。