あれは確か…私たちがバディ組んで初めての事件だったなぁ…
よく刑事ドラマの最後で、崖の上やビルの屋上で謎解きをするシーンがあるけれど、まさにそれだった。
けど、犯人が屋上から飛び降りようとしたのを止めに入った隆弘が何故か10階建てのビルから落ちて…で捻挫。
でも、ビルの屋上から落ちて捻挫なんて普通ではあり得ない。どういう着地をしたのか…そもそも、着地出来たのが奇跡だ。
それから隆弘は何故か英雄扱いされ、この辺の警察署員なら知らない人は居ない程、有名な伝説となった。
しかも、その捻挫すら一週間で完治したという。医師があんぐり口を開けるほどの治りの早さだった。
私だって、もし隆弘がいなくなったら…そう考えると恐ろしかったものだ。まあ、そんなこと杞憂に過ぎなかったけどね。
ボヤッとそんなことを考えていると、目の前にトンッとコーヒーの入ったマグカップが置かれた。
ハッと顔を上げると、隆弘が私をジッと見ていた。
実「ありがと、淹れてくれたんだ」
隆「その足じゃ歩くの大変かな、と思ったもので」
実「へえ、気きくじゃん」
そう言えば、隆弘が照れたように笑うのでもう少しからかいたくなったが、丁度コーヒーが飲みたいと思っていたのでやめておいた。
両手でカップを持って、一口コーヒーを飲んだ。
ん?ちょっと待て…
実「にっが!!」
私が声を上げると、隆弘が隣でケラケラ笑いだした。
こいつ…ミルクと砂糖入れてないな!
実「ちょっ、これ、ミルクと砂糖入ってない!」
隆「うん、糖分皆無(笑)」
実「私がブラックで飲めないの知ってるくせに」
隆「ごめんごめん(笑)ちょっとからかいたくなって。あー面白い(笑)」
実「なにも面白くない!」
全く…何子供みたいなことしてんのよ!言われてみれば、確かに色全然違うし…もう。
隆「怒んなって、ほらよっ」
そう言って、ミルクと砂糖を2つずつ手渡された。
そうそう、これが正規。
実「別に、怒ってないけど」
隆「てか、なんでブラック飲めないの?」
実「苦いから」
隆「おっ子ちゃま~」
実「っるさい!」
だが、憎たらしいことに隆弘はいつもブラックだ。
いいしお子ちゃまでも!私はこれがいいんだもん!
隆「それ一口ちょうだい」
実「別にいいけど」
そう言うので、ミルクと砂糖2つずつのコーヒーを隆弘に渡した。
隆弘は、ズズッと一口飲んだ瞬間声を上げた。
隆「なんだこれ甘っ!?」
実「そんな甘い?」
隆「こんな甘いのよく飲んでるな、砂糖飲んでる感じ」
実「そこまで言う?」
隆弘とそんな会話を繰り広げていると、声をかけられた。
課「西島、宇野、ちょっと」
課長だ。私と隆弘は、会話を中断させて課長が招いた部屋に入っていった。
課「すまないね、実は君たちに折り入って話があってな」
なんかそう言われると怖いんですけど…と内心ビクビクしていると、課長は懐から茶封筒を取り出して私たちに示した。
隆弘が受け取って封を開ける。それを2人で覗き込んだ。
異動…?へーぇ…って!?
隆実「「えええっ!?警視庁!?」」
私と隆弘が驚いて声を上げると、課長は大きく頷いた。
課「ついさっき辞令が降ったんだ。送別会やる暇も無くて申し訳ないんだが、まぁ明日から頑張ってくれ」
実「明日から!?」
用紙をよくよく見ると…確かに明日付けだ。
私と隆弘は、思わず2人で顔を見合わせた。隆弘も相当驚いている。
課長は、そんな私たちを知ってか知らずか、颯爽と部屋を出て行った。
隆「俺らが…どういうことだ?」
実「しかもセットでって」
隆「イイじゃん、お得なセットで」
実「それはどうだか。…しかし、特別捜査班ってのはなんのこっちゃ」
隆「さあ?聞いたことねーけど…」
なんだか、驚き過ぎて…でも、憧れの警視庁!
不安もあるけど…嬉しさの方が断然大きい。特殊犯罪捜査課、というのが何だか分からないけど…まあ、いっか!
隆弘も、思っていることは一緒のようだ。2人でお互いの顔を見て、笑いあった。
隆「今夜、少しだけ呑みに行くか」
実「祝杯ね」
そんな約束も交わして、小さくハイタッチをした。
To be continued...