一方、その頃……
side 千晃
千「終わったーっ!」
完成した調書を目の前に、あたしは大きく伸びをした。
伸びをしながらミスがないか確認し、ファイルを立てて隠れて寝ている(つもりだろうけど、隠れられていない)課長のデスクの上にわざと勢い良く調書を置いた。
バンッ!!という音で、課長がびくりと肩を震わせた。
千「調書、出来ました」
寝てるなよ…と思いながらも、微笑みを浮かべ、調書の置き方とは対照的に、むしろお淑やかさを感じさせるように丁寧に伝えた。
大丈夫、これみんなやってるから。
あたしも先輩に教わった。
課長は寝起きなので曖昧な返事しか返ってこなかったが、了解、という意味だと取って、デスクに戻った。
さっ、ランチタイムだー!
弁当を持って屋上に上がると、ベンチに腰掛けている後ろ姿を見つけた。
千「おーい!真ちゃーん!」
声を掛けると、真ちゃんも振り返った。
真ちゃん、とは、今しがた振り返ってくれた與真司郎のこと。この署に配属されて間もなく起こったとあることがきっかけで、よく一緒にいるようになった。刑事課と凶行犯係と合同になれば、バディもしょっちゅう組んでるし!
年は2つか3つ下なのに、すごく頼りになる。でも、たまにすごい可愛いの(笑)
とにかく、一緒にいて楽しい!
真「ちあちゃん!こっちや、こっち」
千「分かってまーす!(笑)」
あたしは、真ちゃんの隣に座ってお弁当を広げた。
真ちゃんは、あたしを待ってくれていたのか、ほぼ同じタイミングでお弁当を食べ始めた。
何かと緊張しっぱなしのこの職場で、唯一落ち着ける時間だ。
千「いただきまーす」
あたしも、真ちゃんより少し遅れて食べ始める。
うん、今日の卵焼きもバッチリ!
料理は得意だけど、卵焼きだけは上手く出来なくて今まで避けてた。少し前に練習し始めて、おかげで最近は上達してきた。
すると、卵焼きが一個消えた。
かと思うと、真ちゃんが摘んで食べていた。
真「おっ、これ美味い」
千「あーっ!あたしの卵焼き!」
真「ちあちゃん、卵焼き巻くの前より上手くなったな!」
千「ほんと?良かったぁ、練習した甲斐あった!…って、もうその手には乗らないから!(笑)」
真「ばれたか(笑)」
そう言って真ちゃんは笑った。
…この笑顔に、いつも負けてしまうのです。
それから、あたしに訊いてきた。
真「そっち、今日なんか事件あったんか?」
そっち…とはつまり、あたしの所属する『凶行犯係』のことだ。
凶行犯係は、役目的には刑事課とほぼ一緒なんだけど、ただ名前が違っている感じ。結局、合同になることが多いんだけどね。
ちなみに、真ちゃんは刑事課の刑事だ。
千「ううん、今日はまだ何も!そっちは?」
真「こっちも、特には」
千「じゃあ今日はどこも平和主義が守られてるってことね♪」
真「せやな、ええことやな…」
ふと、そういう真ちゃんの顔が、いつもよりも寂しげな表情をしていることが気になった。
千「真ちゃん…なんかあった?」
あたしが訊くと、真ちゃんはハッとしたようにあたしの顔を見た。
真「やっぱ、ちあちゃんにはお見通しやな…実は俺」
真ちゃんがそう言いかけた時。
緊急出動の合図が鳴った。
真「後で話すなっ」
千「りょーかいっ、平和ぶち壊した奴は許せないからっ」
食べかけのお弁当を片付け、急いで屋上を後にする。
真「じゃあ、後でな」
千「うん、そっちも気をつけて」
そう言って、お互いの健闘を祈って拳をぶつけ合った。
To be continued...