千「はぁー…疲れた」
あの後、犯人の取り調べや被害者のケア、雑務…と色々忙しく動き回っていた。
それらが終わり、デスクで報告書を仕上げていたとき、誰かに肩を軽く叩かれた。
「伊藤さん、課長が呼んでるよ」
千「課長が?分かった、ありがとう」
伝えてくれた彼にお礼を言って、あたしは課長の元へ向かった。
千「課長、お話って…」
課「伊藤、急な話で悪いのだが…」
そう言って、一枚の用紙をあたしの目の前に翳した。
用紙に目を近づけて読むと…
千「異動……はぁ?警視庁っ!?」
警視庁の…特別捜査班!?
ちょっと待って警視庁!?なんであたしなんかが…?
あたしは、驚きのあまりついつい大声を上げてしまった。
周囲の視線が「何事か」とあたしに集まるが、そんなの気にならないほどに驚いていた。
千「課長、これってどういう…」
課「いや、俺にもよく分からん。今朝方令が下ったばかりでな。とにかく、明日から頼むぞ」
千「明日!?」
用紙をもう一度見ると…確かに日付は明日からになっている。
課「まぁ、西署の若手の代表として、せいぜい頑張りたまえ!」
千「は、はぁ…」
驚きを通り越して、何が何だか分からなくなってきた。
あたしが、明日から、警視庁の…?
警視庁なんて言ったら、あたしら所轄の刑事にとっちゃ憧れだよ!聖地!
…なーんて言ったらちょっと違うと思うけど、とにかくそんな感じなの。
でも、特別捜査班って何だろ?
それよりも…あたしの中で過ぎったのは真ちゃんのこと。
真ちゃんと別々になっちゃうのか…。
ちゃんと話さなきゃなぁ。
警視庁に行くのは嬉しいけど、真ちゃんと離れ離れになってしまうのが少し寂しかった。
配属されたばかりの頃、まあ…色々あったの。それで真ちゃんに助けてもらって、それから話すうちに仲良くなった。
あたしは携帯を取り出し、真ちゃんにメールをした。
『大事な話があるの。都合つく時でいいから、返事くれないかな?』
送信ボタンを押す。
これでよし。
携帯を仕舞い、気持ちを落ち着かせるべく、あたしはコーヒーを淹れた。
糖分は入れない。ブラックのまんま飲むのが好きだ。
程なくして、携帯が音を立てた。
真ちゃんだ、と直感的に思い急いで携帯を開いた。
予想通り、真ちゃんからだった。
『俺も、さっきの続き話さなあかんからな。今なら時間空いとるで』
あたしは、超高速で返事をした。
『分かった、じゃあ屋上で!』
すぐに、返事が返ってきた。
『了解』
それを見たあたしは、机の上に携帯を置いて、何も持たずに課を飛び出した。
屋上に着くと、真ちゃんはもうすでにいつものベンチで待っていた。
千「ごめんね、急に呼び出して」
真「ええって、俺もやったし。…それで、話って?」
千「えっとね…」
いざ言うとなるとすごく言いづらい。
不安だらけ。
でも…踏み出さなきゃ、何も変わらないよね。
千「あのね、あたし…急な辞令で異動になったの」
あたしが言うと、真ちゃんは「えっ!?」と、すごく驚いた顔をした。
そりゃ、驚くよね…。
真「何処に?」
千「警視庁…」
警視庁、とは言ったものの、まだ夢のような気分で、なんとなく不安になって少し声が小さくなった。
すると真ちゃんは、そんなあたしとは対照的に、さっきよりも大きな声で「えええっ!?」と声を上げた。
そして、思いもよらぬ言葉を発した。
真「ちあちゃん、もしかしてそれって…『特別捜査班』ってとこ?」
千「えっ…?」
なんで、真ちゃんがそれを…?
千「そう…だけど」
すると真ちゃんは、子供みたいにぱあっと顔を輝かせた。
真「奇遇やな!俺も、明日からそこに異動なんや!」
千「えっ!?ほんと!?」
今度は、あたしが驚く番だ。
まさか、一緒になれるなんて!
こんなことがあるなんて!
千「やったー!真ちゃんと一緒だ!」
あたしたちは、文字通り抱き合って喜んだ。
千「もしかしてなんだけど、真ちゃんの話って…それ?」
真「せや!でもこれで悩み解消や♪」
真ちゃんももしかしたら、あたしと同じようなことを考えていたのかもしれない。
でも、これからは部署も一緒だし!
真「ちあちゃん、改めてこれからよろしくな!」
千「うん、こちらこそ!頑張ろうね!」
あたしと真ちゃんは、そう言って笑いあった。
To be continued...