千「もう、遅いよ!」
下に降りると、予想通り千晃はお怒りだった。
制服の上からエプロンをしてフライパンを誇らしげに持っている辺り、今日は早起きして朝食を作ったのだろう。
もう2年以上一緒にいるが、初期に比べると千晃もだいぶまともに料理が出来るようになった。
机の上を見ると…千晃のメニューには何やら見慣れない料理があった。
隆「千晃、あれ…もしかして」
俺が尋ねると、待ってましたとばかりに千晃は答えた。
千「フレンチトースト!おばさんに教わりながら作ったの」
秀「千晃、フレンチトースト作れるようになったのか!」
千「馬鹿にしてる?」
光「最初作った時なんて、卵に浸して干すの?だったからな(笑)」
千「もうやめてよそれ、恥ずかしいから!あたしだってやればできるの!」
秀「YDK」
光「やっても出来ない子」
千「出来てるって!」
すると、上の階から浦ちゃんとそのお父さんが降りてきた。
直父「おっ、いい匂いがするな」
直「てか朝から元気だなー(笑)」
光「浦ちゃん、おじさんおはよっ」
千「フレンチトースト作ったの!」
浦ちゃんと浦ちゃんのお父さんの2人、それから浦ちゃんのお母さんは、訳ありまくりの俺らを住まわせてくれている人たち。
命の恩人、と言っても過言ではない。
身寄りが無く、事情があって施設には入ることが出来ない俺ら5人を引き取ってくれているのだ。
その事情は追い追い話すとして。
隆「とりあえず食うか!」
光「食ってみたら分かるな」
千「まだ疑ってるの?」
秀「真司郎起きろー」
俺らがやり取りしている間に立ったまま眠ってしまった真司郎を秀太が起こし、千晃は洗濯をしているおばさんを呼びに向かった。
おじさんがいつものようにテレビをつけると、朝恒例のニュースがやっていた。
『続いてのニュースです』
テレビの中の美人アナウンサーが話し出す。だが俺の好きなアナウンサーでは無い…ってそんなことはどうでも良くて。
『昨夜、**県○○市の河川敷で遺体が発見されました。50代男性と見られており、身元は不明。恐らく何者かに殺害されたものとし、**県警ではこの事件を現在○○市で発生している連続殺人事件と関連付けて捜査を……』
ニュースは、連日ワイドショーを騒がせている連続殺人事件の報道をしていた。また犠牲者が増えてしまったようだ。
浦父「世の中物騒なことが増えたな」
光「もうこれで4件目だっけか」
浦「まあ、まだ続くな…これは」
秀「ちょっと、浦ちゃんがそれ言うと怖いからやめてよ」
浦「冗談、とも言えないんだな。残念ながら」
俺も、決して浦ちゃんが冗談でそんなことを言うとは思えない。浦ちゃんの発言からするに、浦ちゃんには”未来が視えている”のだ。
その時、俺の視界に何かが映った。
隆(あれって…)
よくよく見ると、ブルーシートのすぐ側に、先ほど顔写真が出てきた身元不明の男性が佇んでいた。
隆(…無念だったんだろうな)
そう、あれはきっと成仏しきれていない男性の霊だ。だが、姿は視えていても何も出来ないのがもどかしい。
俺には…そう思うことしか出来ない。
千「ねー早く食べようよー」
いつの間にか戻ってきていた千晃が、一番乗りに席に着いて急かす。奥からはおばさんがやってきて、千晃の横に座った。
光「食べよ食べよ」
浦「早くしないと遅刻するぞ」
秀「はいはーい」
今か今かと待っていた男子陣は光の速さで駆けていく。
隆「俺もう食べるよ?」
浦母「はいはい、いいわよ(笑)」
秀「うえーい」
光「いただきまーす」
俺らは、誰が言うまでも無く千晃が初挑戦したフレンチトーストに手を伸ばした。
…うん、これ!
隆「美味い!」
秀「千晃、これめちゃくちゃ美味い!」
それまでちょっと不安そうにしていた千晃が、一気に顔を輝かせた。
千「ほんと!よかったぁ!」
あれだけ眠そうにしていた真司郎もすっかり目覚めたようで、こくこく、と頷いていた。
直「初めてフライパン握った日が懐かしいなぁ」
光「フレンチトースト干すの?とか言ってたのが嘘みたいだな」
千「だから!もうその話はいいっての!」
浦父「(笑)」
すると、浦ちゃんがあっと声を上げた。