side 隆弘
その日は全ての授業を居眠りして過ごし、部活もやっていないのでそのまま帰ることが出来た。
宇野さん…あれから一度も戻って来なかったな。
そんなことを考えながら昇降口に1人で向かうと、俺の姿を認めた真司郎が、一年の下駄箱のところで小さく手を上げた。さすが学年一のモテ男。その姿がとても様になっている。
真「よー、待っとったで」
隆「あれ、あいつらは?」
真「千晃の買い物に付き合ってる」
隆「なるほどな、じゃあ今日は真ちゃんとデートだ♡」
真「キモ。早よ帰るで」
隆「…すんませーん」
スタスタと歩き出した真司郎の背中を小走りで追いかけた。
隆「あれ、そういえば…いいのか?千晃について行かなくて」
真「…別に。家帰れば会える」
隆「へーぇ、そんなんでいいのかなー?」
真「何や、その口調は」
隆「べっつにぃ~?上手くいけばデート出来たかもしれないのになーと思って~?」
真「…お前、なかなかムカつくな」
隆「そりゃどうも」
真「それに…そんなん出来へん」
隆「何で?」
俺が訊くと、真司郎は顔を真っ赤にして言った。
真「緊張して…何も喋れへん///」
隆「ヒュー!」
真「ほんま煩いな、西島」
…会話からも分かるように、真司郎は絶賛片想い中。ま、分かる分かる。千晃は可愛いもの。現にモテるし。
ま、なんとも好きな人が居るとかで全部お断りしちゃうんだけどね。
真「せやから、ええ。俺は見守ってるだけで…」
隆「真司郎のバカ!そんなんじゃダメだろ!」
真「お前誰や…」
隆「恋する乙女の聖なる味方、恋愛アドバイザー・ニッシーです!」
真「…なんかドッと疲れたわ」
隆「ニッシーに何でもご相談なさい!」
真「俺乙女じゃあらへんから。ええわ」
隆「いやいやいやいやちょっと待てって!」
真「あ…」
話していたら、突然真司郎が前を向いたまま立ち止まった。
隆「え?何?」
真「しっ!静かに」
真司郎に言われて、黙って物陰に隠れると…視線の先に2人の男女が見えた。
千晃と…光啓だった。
2人で笑って、仲良さそうに話している。こちらに気付いている様子はない。
あれ、そういや…秀太がいない。
真「何でや…秀太は?」
真司郎がぼそりと呟くように言った。
真司郎としては、やはり気にするところなのだろう。
真「3人で行くはずやったのに」
2人の姿が見えなくなると真司郎は普通の声量に戻して言った。
あの2人、まさか付き合って…?
いや、そんなわけ…無いはず。
真「行こか、西島」
隆「お、おう」
真司郎はすっかり元の様子に戻った…ように見えるが、内心そうではないのだろう。
光啓が千晃の事を好きなのは見てれば分かるし、真司郎だって察している。だからこそ余計複雑なのだろう。
俺はどうなのか。そう聞かれれば分からない。けど…
その時何故か、宇野さんの顔が浮かんだ。