嫁とオレと長男の友達。
3人で学校へ。
ウチを出る時。
「パパー。怒っちゃダメだよー。」
「そーそー。顔が怖いんだから優しくお話ししてきなさい(笑)」
留守番のJと次男は呑気にニヤニヤしてた。
学校に着くと。
嫁が
「(長男の友達)君。ここから後戻りはできないわよ?」
「うん。大丈夫!もうここに来るつもりないから。来たいとも思わない。」
もう2度と戻らない場所。
そうハッキリ言った。
オレはいつものグラデーションのメガネを外した。
印象悪いじゃん?
なのに。
「今からタレ目にはなりませんよ?(笑)」
嫁はケラケラ笑う。
緊張感ゼロ!
インターホンを押すと。
30代ぐらいの爽やかな男の人が出てきて。
「(長男の友達)君!(オレ)さんですね?先ほどはお電話ありがとうございました。」
こんな青年と話してたのか、オレ💧
しかしこの高校はこれだけじゃなかった。
校長室に案内され。
校長でも教頭でも若いんだよ!!
おじいちゃんとおばあちゃんじゃなかった💧
どんな展開になるのか全く検討がつかなくなったのでオレはひとまず挨拶だけして黙ってようと思ってた。
堅苦しい話しが始まると思いきや。
「(長男の友達)君、ジュースあるよ?飲む?」
と、教頭先生。
大人には
「お茶というより、コーヒーかなにかの方か良いですよね?」
と、校長先生。
ピリピリした感じはしなかった。
いよいよ本題に。
「(長男の友達)君はどうですか?」
「毎日、元気にのびのびと過ごしています。うちの下の子の遊び相手になってくれて、良いお兄ちゃんです。お手伝いもたくさんしてもらってます。」
「そうですか。何度か面談をさせてもらったんですけど、今のこの表情が1番良いです。(オレ)さんは小学生の頃から(長男の友達)君のことをご存知だと伺ってますが。」
「長男の同級生で1番の友達でした。家も近所だったので、それからずっと。」
「このような状況をどうお考えですか?」
「こうなって良かったと思ってます。子育ては人それぞれだと思います。ご家庭によって方針もあるでしょうし。他人が口出ししてはいけない領域のような世界ですから。でも(長男の友達)君のご両親には、そうは思っていても気にかかるようなことが多かったので。ウチに来て、本来の(長男の友達)君の良いところがたくさん見られてホッとしています。」
「(長男の友達)君の顔を見れば分かります。学校としましては、やはり保護者の方にご相談できればと思うのですが。(オレ)さんはどうでしょう。(長男の友達)君のご両親とお話し合いなどは。」
「無駄だと思います。ウチに泊まっていることを知りながら連絡の1本もしてこない大人ですよ?少なくとも私達とは親の認識がズレていますし、荷物をまとめてお金まで包んで用意してあったぐらいですから。」
「お金!?荷物ってことは、」
「連れ戻す気もナイってことですよね?入ってた洋服は全てサイズが小さいものばかりで。連日、こんなに気温が高いのに長袖が入っていて。下着はたったの1枚。どんな事情があったにせよ、自分の子供の着替えがこんなに不完全なんてあり得ませんよね?もう明日で1週間です。」
長男の友達が
「昨日、新しい服を買ってもらいました。親からのお金を渡してもいらないって言われちゃうんです。ご飯も食べてるのに。」
「封筒のお金?」
「うん。僕、みんなでご飯食べるの楽しくていっぱい食べちゃって💧だから悪いから親からのお金渡すんだけど、お手伝いしてくれたら良いよって💧」
「優しいね。お手伝いはどんなことをしてるの?」
「犬の水を交換したり、玄関の掃除とか、お皿洗ったり。料理も教えてもらったりしてます。(長男)の家族は、いつも僕にありがとうって、良くできたねって褒めてくれるんです。」
何気ない日常に。
教頭先生が目を閉じて頷いた。
そして
「お家ではお手伝いしてたの?」
きっと、自宅でどうだったかを聞きたかったんだと思う。
「手伝うこともできませんでした。ご飯のおかず取られて、いつもお腹がすいて。妹ばっかり優しくされて。僕は毎日家に帰ることが嫌でした。バカだから怒られたり、僕が子供なことが恥!って言われたり。」
「それを誰かに相談した?」
「(長男)のお母さんは分かってくれると思って話しました。中学生の時も家出して泊めてもらったことがあるから。」
「そうだったの。話しを聞いてもらえる人がいて良かったね。」
「うん。僕の親になんて言われるか分からないよって。ヒドイこととか。なのに、大丈夫って言ってくれたり、味方だよって言ってくれたり。僕はもう家には帰りたくないって言ったら、ずっと居て良いって言ってくれたし。」
どれだけの環境にいたかは察しがついたと思う。
先生達は悲しそうな顔をしてたから。
いつもお腹がすいてた。
暴言を吐かれた。
服も買ってもらえず、気にもされてなかった。
挙げ句の果てには金。
どこを取っても帰りなさいと言える要素がなく。
苦しい想いを抱えてきた16歳の話しをただただ聞いてるしかできない。
でもそれは逆にもう1つの救いでもあった。
先生も話しをちゃんと聞いてくれる大人だったから。