マズイ。

今の私、非常にマズイ。

 

 

西島君が隣に立っていることに慣れていないわけじゃない。

なのに、どうしてこんなにドキドキしているんだろう。

 

 

そっか。

今まで隣同士に立つことがあっても、大抵他の人達も一緒の時が多いからだ。

こうして二人きりで……ってことはなかったっけ。

 

 

肩が触れそうで触れない距離。

こんなに接近していること自体、初めてかも。

 

 

なんて、気づいてしまったら。

さっき以上に意識しちゃう。

 

 

ふと目線を上げれば、すぐ近くに西島君の顔があって。

時折、こっちに視線を移され。

目が合うと屈託ない笑顔を向けられた。

 

 

 

でも、好きになっちゃいけない人なんだ。

 

 

「三崎はさ、どうして皆みたいに俺を‘ニッシー’って呼ばないの?」

 

「えっ」

 

 

ドキッとした。

こうやって、改めて指摘されると答え難い。

本当は私も皆のように親し気に呼びたいと思っているけれど。

 

言えない。

 

 

「特に理由はないけど」

 

 

なんて、はぐらかしてみたけれど。

西島君には、違和感がある答えに感じたのだろうか。

改めるように身体を私の方に向けると、覗き込むように言った。

 

 

「なら、俺が三崎のことを‘茜’って呼んだら、皆と同じように呼ぶ?」

 

 

「なんか、凄く距離感あるような気がしてさ」と、西島君は付け加えた。