……だろうね。

私が‘西島君’って呼んでいるのは、敢えてだもん。

ワザと距離を作ってるの。

 

 

これ以上、気にならないように。

これ以上、意識しないように。

これ以上、好きにならないように。

 

 

 

「やめて。呼び捨てなんてされるような、親しい間柄じゃないでしょ」

 

「どうして? だって三崎は……」

 

「ニッシー! ここに居たの? 探したよー」

 

 

西島君が言いかけた言葉を遮るように、実彩ちゃんが私達に向かって駆け寄ってきていた。

可愛い笑顔が似合う実彩ちゃんは。

 

西島君の……彼女で。

 

私の……友達だ。

 

 

「茜、ここで何してたの?」

 

「えっと、雨が降りそうだなぁって、ボーッと空眺めてただけ」

 

 

実彩ちゃんに答えた私を見て、隣で噴き出したのは西島君だった。

 

 

「やっぱりそうじゃん、俺が言ったことが当たってた」

 

「えー? 何が? どうしたの? ニッシーと茜と二人で空見てたの?」

 

「ちがっ」

 

「そうだよ」

 

 

否定しようとした私の声を掻き消し、西島君が実彩ちゃんに答えてしまった。

 

やめてよ。

そこは否定するべきところでしょう?

なんで素直に答えてるのよ。

そんな答え方したら、実彩ちゃんが誤解しちゃうかもしれないのに。

 

 

「ふぅん、そうなんだぁ」

 

 

ほら!

実彩ちゃんの表情が雲ちゃったじゃない。

誰だって面白くないよ。

自分の彼氏が自分以外の女と親しくしているなんて、気分悪くするに決まってる。

 

 

「実彩ちゃんこそ、西島君を探してたんじゃないの?」

 

 

この場を取り繕うように、慌てて話題を逸らしてみる。

「そうだった!」とポンと手を叩き、実彩ちゃんは西島君の腕を取った。

 

 

「ニッシー、卒論の修正箇所がどうのって、先生が呼んでたの」

 

「えー、修正ありなの?」

 

「いいから、連れて来いって言われているんだから。一緒に来てよ」