ドセタキセルと言う抗がん剤 | ワーママだったけど、乳がん治療中

ワーママだったけど、乳がん治療中

自然妊娠で、46歳と11か月で高齢出産し、旦那、息子をほったらかしにして海外出張に行っていたら、コロナでStay in Japan . そんな時、61歳で乳がん発覚、
ステージ2A、ホルモン受容体陽性、Ki67は50%、悪性度2.


88歳の母と

抗がん剤治療後3年目

第1章 ドセタキセル——

名前だけ聞くと、冷たい化学のかたまりのようだ。

けれど実際には、この薬は私の体の中で、がん細胞を足止めする小さな兵士のような働きをしてくれた。


がん細胞は、ひたすら分裂し続けるものだ。

そのために「微小管」という細いレールをつくり、そこを通って新しい細胞へと増えていく。


ドセタキセルは、そのレールを固定してしまう。動けなくなったがん細胞は、やがて力尽きる。


つまりこれは、細胞分裂を妨げる作戦なのだ。


投与は三週間ごとに一度。


静脈からゆっくり体内に入っていく間、私はただベッドに寝て、時間の流れに身を任せる。そうそう、毛根を守る為に、頭皮を氷で冷やすことも忘れないでやった。


その後やってくる副作用——白血球の減少、むくみ、爪の変色、そして全身の倦怠感。


それらは、薬が確かに働いている証でもあったから、耐えられた。


この薬は、同じ仲間のパクリタキセルより回数は少ないが、少し副作用が強いと言われている。


だからこそ、投与前後にステロイドを飲み、むくみやアレルギーを防せいだ。


毎回の治療は、少し緊張を伴う儀式のようだ。


3ヶ月、この薬と歩いた。


その間、体は確かに消耗していくが、心のどこかで「これは自分を強くする苦痛だ」と信じていた。


ドセタキセルは、ただの化学物質ではない。

私にとっては、痛みと引き換えに時間をくれる、静かな戦友だった。


とても力強い戦友だった。