先日、O病院に行った。
ついこの間行ったばかりのような気がするのに、もう1ヶ月も経ったのだ。
主治医によるほぼ秒の診察の後、部屋を変えてZ先生による次回のCTの予約と注意事項の説明を受けた。
部屋に入ったとたん、以前いた若い先生を思い出し懐かしく思った。(以下、若い先生をW先生と言う。)
W先生は、2020年4月から私がオプジーボによる治療を受けていた時に、主治医と一緒に治療に携わっていた先生である。
若くて、元気いっぱいで、いつも全力疾走、全力投球、フルスイングしている感じの先生だった。
患者の前ではいつも笑顔で、顔はジャニーズ系のイケ面なのに、元気過ぎて、いじられキャラの話しやすい良い先生だった。
私の癌が急に消えたタイミングと同じ時期に、他の病院に異動された。
んで、Z先生が自分の話を終えた後、「今日は、他にW先生から頼まれごとがありまして・・・。」と話題が変わった。
ちょうど、W先生のことを思い出していたのでその偶然に驚いた。
「W先生が、もふ子さんほど、治療の効果が早く出たケースはとても珍しいと研究をされていて、その論文を雑誌に投稿したいと思っているそうなんです。」
「え?ああ、どうぞどうぞ!いやむしろ、とっくに世間に広めていいくらいだったのに、どうぞどうぞ!」と私は喜んで答えた。
「それで、投稿したいのが、外国の雑誌で、患者の同意のサインが必要ということなんです。」
そして、W先生からのメッセージが書かれた書類と、英文がずらっと並んだ2枚くらいの「Patient Consent(患者の同意)」という書類と、翻訳文を見せられた。
W先生のメッセージの内容は、今後の医学の発展のために、論文を投稿したいと思っていること、私の治療時に生じたあるものについての論文であること、論文の投稿に同意してもらうと幸いです、という主旨のことが、体の労いの言葉と一緒に書かれていた。
もちろんOKですよ!!
勝手にどしどし書いてもいいくらいなのに。どうぞどうぞ!100個でも何個でもサインしますよ~!
と英文の終わりの方にローマ字で署名した。
「何なら、Z先生も私のこと、勝手に書いていいですからね~。」と笑いを交えて部屋を出た。
外国の雑誌の名前を聞かなかったし、英文の書類も控えももらわなかった。W先生のメッセージの紙だけいただいた。
向こうからくれるなら受け取るが、回収されたので、あえて「ほしい、とか、ください。」とは言わなかった。
私の治療中に生じた『あるもの』は2つ書かれていた。
まだ、投稿前なので、それについては書かない。
それから私のテンションは上がったままだった。
今更であるが、オプジーボが効いたことのすごさを実感して、誇らしい気持ちになった。
以前、このようなブログを書いた。
この時、私は、いろいろなものに喜んでいた。
治療することのありがたさを喜びながら、治療に向き合っている。
この時のブログで「こんな幸せな気持ちを与えてくれたのだから、病気には効果がなかったとしても、私の心には効いたよ!」と言っている。
自分が思ったことなのに、けなげだなと感じる。
それなのに、今の私はその頃の謙虚な気持ちもけなげな気持ちもどこかに行ってしまい、ブーブー文句をつぶやいている。
肩が痛い、首が痛い、歯が痛い、じゃべり方が、声が、あっちがこっちが・・・と。
仕事でもイライラが多い。
そんな私に、今回の急に降ってわいたようなW先生の話。
ただただ嬉しい。
雑誌で掲載されるとかボツになるとかは、別にいい。(掲載されてほしいけど。)
また、オプジーボが私に幸せを感じさせてくれた。
今はそのことに感謝するだけです。
オプジーボを初めて3ヶ月くらいたった頃のメモ書きを見た。
(2020年4月に「長くて1年生きられるかもしれません。」と主治医に言われていた。)
「将来に向けての夢や希望はないけれど、今生きている幸せを感じる。」
「死を意識しながら、まだまだこんな日が続けばいいな・・・」
などと、思いついた時にちょっとメモしていた。
幸せを感じる時が、普通のありふれた生活だったり、人の優しい手だったりした。
毎日、いろんなことがあって、きれいごとだけではやっていけないガチャガチャした世の中だけど、薬が効いた幸運を無駄にしないように、私もがんばっていこうと思った。