二 聞く体験活動


 学生に、どんなときに、人の話を一生懸命に聞いたか尋ねてみた。「ここは試験に出るからという話を一生懸命に聞いた」という学生が多くいたが、これはあまりに貧弱な聞く活動である。できるだけ、豊かな聞く体験をさせたいものだ。 
 極めて個人的なことになるが、人の話を真剣に聞いた体験を、まずいくつかあげてみる。  その一。八年ほど前、東京から講師を招いて、福岡でディベート体験講座を企画したことがある。ディベートとは、「ある特定のテーマの是非について、二グループの話し手が、賛成・反対の立場に別れて、第三者を説得する形で議論を行うこと」である。ディベートの進め方の学習のあと、実際、ディベートを体験したが、相手の立論や反駁を、必死になって、メモをしながら聞いた。必死になって、メモし、理解し、咀嚼し、論点をみつけなければ、あとでそれに対して自分なりの反論ができないからだ。
 その二。四年ほど前、スペインのマドリードに行き、読書へのアニマシオン・セミナーに参加した。読書へのアニマシオンとは、本を読んだ後、その内容をふまえ、参加者がコミュニケーションをしながら一緒に遊ぶ活動である。一緒に遊ぶ方法(アニマシオンでは「作戦」と言う)は、七十五にも及ぶのだが、そのひとつの作戦で「あらすじ」をリレーで幾人かで言うことになった。前の人がどこまであらすじをいうのかきちんと聞いていないと、続きのあらすじをいうことはできない。これも一生懸命に聞いた体験のひとつである。

 授業において教師の講義を聞くことや集会で校長の講話を聞くことなど、一生懸命に聞いてほしいのは当然だが、ここにあげたディベートや読書へのアニマシオン、その他のワークショップ、グループワークトレーニングなど、豊かに、そして楽しく、真剣に聞く場面のある活動も大いに体験させたい。
 また、「読み聞かせ」を「聞く」体験も、子どもたちにとっては、楽しい活動である。「読み聞かせ」は、小学校四年までは、その後の活字文化への関わりかたにも影響をあたえることからぜひ積極的にとりいれたい活動であり、ダニエル・ペナックが『奔放な読書』で指摘しているように、小学校までとはいわずに、中学校・高校でもやってほしい活動である。
 いずれにおいても、「思わず緊張して聞けるような話を聞」く体験「なしに聞く耳は育たない」(大村はま氏)ということばを、指導者はいつも頭においておく必要がある。


(文責:穴見嘉秀(あなみ よしひで)@九州大谷短期大学表現学科情報司書フィールド助教授  a73@nifty.com )