「聞く力」をどう育むか


  一 聞くコツ


 「聞く力」をどう育むべきか。
 それには、聞く力がつくコツそのものの学習させることと聞く体験活動を充実させることであると私は考える。
 「聞く」ということがありふれた日常的行為であるがゆえに、聞くことそのものの学習をしないと生きていけないという切実感は、あまりない。聞く指導の研究も、話す・読む・書く指導の研究にくらべると、極端に少ない。日本を代表する国語教育者である大村はま氏ですら、「よく聞けるようにするには、よく聞ける話をたくさん聞かせるほかはない」と言われるほどだ。
 だが、私は、よく聞けるようにするには、よく聞けるようになるコツも学ぶ必要があると考える。そして、その「聞く」という言語生活を充実させ、よき聞き手を育てるための理論として、NHK日本語センターの理論を推したい。日本で放送がはじまって八十年、話しことばの最前線で話しことばと格闘し、研究し、実践し、そのノウハウを蓄積してきたNHK日本語センターの理論と方法論は、現実的であり、実践的である。
 そのNHK日本語センターで出版されている、「聞き方」に関する唯一の著書が、『はずむ会話へ 聴き上手のコツ』(杉本泰夫著・NHK出版)である。
 この本では、「聞く」ではなく、「聴く」「訊く」ということばが多様される。「音を音として物理的に感覚する受動的なプロセス」である「聞く」からスタートし、「理解」と「共感」という、エネルギーをつかって「聴く」、「能動的プロセス」に進むことを提唱しているのだ。「聴く」において、「理解」とは「情報を選択する作業」「解釈し理解する作業」「知識から知恵への作業」の三つであり、「共感」とは「話し手の『感情』(心の中の響き、意図など)を聴きとる」ことであるという。「理解」は「知性」、「共感」は「感性」、頭と心のふたつを働かせて「聴く」ということだ。
 杉本氏は、次のような「聴く」コツをあげている。


   1 意味ある相づちを打とう
   2 相づちにひと言添えよう
   3 最後まで聴こう
   4 早合点して、話の腰を折らない
   5 確認をとって、明確化しよう
   6 リピートして心の意味を探ろう
   7 気持ちを込めたことばを大切にしよう
   8 相手の話の中から訊こう
   9 頭に描きながら聴いて、訊こう
   10 心を開くオープンな質問をしよう
   11 横に座って、肩を組もう
   12 相手も認め、自分も認めよう
   13 目でも聴こう
   14 目にも伝えよう


 これらのコツや、それ以外、たとえば「メモをとりながらきく」などのコツを、「聞く力」を育むために、ぜひ、具体的に取り立ててトレーニングしていきたい。私は、大学の科目、「日本語研究」「コミュニケーション論」などで、学生に、アイコンタクトのとりかた、傾聴トレーニングなどこれらの項目をワークショップとして体験させている。小中高の現場でも、「国語」「英語」「総合的な学習」などの時間で指導できるのではないだろうか。前述の著書の一読もぜひ薦めたい。


(文責:穴見嘉秀(あなみ よしひで)@九州大谷短期大学表現学科情報司書フィールド助教授  a73@nifty.com )