2022年10月ころ筆者がTwitterを眺めていると「蛙化現象」というトレンドを見かけた。

そのトレンドをクリックすると「蛙化現象」の意味を図解したツイートなどが視界に入った。

そして「片想いの相手が自分に好意をもったり振り向いてくれて両想いになったりした途端に相手のことに興味が無くなってしまったり冷めたり嫌いになってしまったりする女性」がいると知り、驚いた。

 

だが、2023年に入ったあたりで「蛙化現象」を別の意味で使っている人が見られるようになった。

その時期を境に「恋人のちょっとした行動や様子が原因で急に覚めてしまうこと」を「蛙化現象」と呼んでいる若者が散見されるようになったのである。

2023年4月公開のニュース記事(CBCテレビ「チャント!」4月13日放送)でも意味の変遷が指摘されている。

 

YouTubeで検索すると2021年10月の動画2022年12月の動画で「恋人のちょっとした行動や様子が原因で急に覚めてしまう」という意味で使われているのが確認できた。

 

気になるのは意味の変遷の早さである。

前述した2022年9月15日の記事では「恋人のちょっとした行動や様子が原因で急に覚めてしまう」という語釈は載っていない。仮に2022年9月頃は、一部のユーチューバー界隈などを除き、新たな意味が定着していなかったとするならば、たったの数か月で「蛙化現象」が新たな意味で使われるようになったということとなる。

言語学の世界では「言葉の意味は時代によって変わってゆく」とよく言われてきた。

だが、「蛙化現象」の意味の変遷は短期間で発生しており、「時代によって変わってゆく」と表現できる範囲を超えている。

 

短期間で意味が変遷した要因としてはネット文化の伝達速度の速さが挙げられるやもしれない。

一部の動画投稿者が「蛙化現象」を本来とは別の意味で使った動画が、動画サイト内で拡散され、「蛙化現象って、恋人のちょっとした行動や様子が原因で急に覚めてしまう現象のことなんだ」と認識してしまった若者が短期間で多数あらわれ、動画サイトの外部でも新たな意味が広がったという可能性がある。

そもそも筆者が「蛙化現象」という用語を知ったのもTwitter経由であり、Twitterにトレンド機能がなければ筆者は未だにその単語を知らないままだったかもしれない。

 

ネットの歴史を振り返っても「中二病」「壁ドン」「同人ゴロ」など意味が変わっていった用語は多い。

 

意味の変遷は元の意味を知っている者からは誤用とみなされうる。

誤用は「檄を飛ばす」や「にわかに」や「破天荒」や「流れに棹さす」など「少し古風だったり現代人にとって馴染み深くなかったりする言葉」に起こりやすいと思われがちだが、「蛙化現象」などのように比較的モダンな単語でも普通に起こりうるのである。