大江健三郎は第81回1979年度上半期芥川賞の選評で名指しではないものの村上春樹に対してこのような評価を下している。

 

 

今日のアメリカ小説をたくみに模倣した作品もあったが、それが作者をかれ独自の創造に向けて訓練する、そのような方向づけにないのが、作者自身にも読み手にも無益な試みのように感じられた。

 

この一文を知人に紹介したところ、知人は「大江が村上に否定的な意見ってことは伝わるけど文章が分かりにくい」との反応を示した。

もし、この一文をより読みやすくするならばどうなるであろうか。

私案の一つをここに紹介する。

 

 

今日のアメリカ小説をたくみに模倣した作品もあった。しかし、その作品は作者を彼独自の創造に向けて訓練するような方向づけになかった。このことが作者自身にも読み手にも無益な試みのように感じられた。

 

 

なお、大江は第83回芥川賞の選評では村上に対し「前作につなげて、カート・ヴォネガットの直接の、またスコット・フィッツジェラルドの間接の、影響・模倣が見られる。しかし他から受けたものをこれだけ自分の道具として使いこなせるということは、それはもう明らかな才能というほかにないであろう」と述べており、村上に才能があると評している。