カート・コバーンというミュージシャンは、洋楽好きには広く認知されているが、社会全体ではカートを知らずに生きてきたという人も少なからずいる。
カートを全く知らない人に対して、彼のことを説明するとしたら果たしてどのような説明が望ましいであろうか。
たとえば「カート・コバーンはニルヴァーナのギター兼ヴォーカルである」と真っ先に説明するのは妥当とは言えない。
何故なら、カートを知らない人は、ニルヴァーナというバンドも知らないだろうと推察されるからである。
「ニルヴァーナのギター兼ヴォーカルだよ」という説明では「カートって誰?」という疑問が「ニルヴァーナって何?」という別の疑問に置き換わってしまうだけだろう。
一方、「カート・コバーンはロック音楽の歴史に多大なる影響を及ぼしたミュージシャンである」などと説明するのはどうだろう。
流石に「ロック音楽という単語を知らない人」は幼児などを除いて居ないだろうし、「ロック音楽の歴史に多大なる影響を及ぼしたミュージシャンなのだ」と説明した上でグランジというジャンルや代表曲などを紹介していけば、説明の聞き手も理解しやすいように思われる。
もう一つ具体例を挙げよう。
今の日本では満年齢が一般的だが、かつては「数え年」も広く使われていた。
これに関して、例えば「数え年は元号と同じ」などと説明するのはどうであろう。
数え年について既に知っている人であれば「なるほど!確かにね!」と深く納得するかもしれない。
しかし、数え年について全く知らない人がその説明を聞いても、疑問が深まるだけであろう。
全く知らない人に「数え年は元号と同じ」という話を理解させたい場合は「元号って開始は0年じゃなくて元年すなわち0ではなく1から始まるよね。そして元号って元号が始まった日(令和であれば5月1日)ではなく1月1日に年の数が一つ増えていくよね。それと同じで、0歳から始まる満年齢と違って数え年は1歳から始まるんだ。また、自分の誕生日(2月29日生まれは例外)を迎えたら年齢が上がっていく満年齢と違って、数え年は1月1日を迎えたら年齢があがっていくんだ」と詳しく話していく必要がある。
このように説明には、良いものと良くないものとがあり、説明を受ける側がどの程度の前提知識を持っているのかによって、すべき説明も変わってゆくと考えられる。