〇経緯
自作曲「主に祈る唯一のこと」の作詞・作曲が終わり、友人のG君にその曲の歌詞を現代文の読解問題形式で紹介したところ、歌詞についてG君がユニークな解釈を披露してくれた。
〇読解問題
問題1:本曲における「乾き果てた土地に涙を恵む者」とは誰を指すか。漢字一文字で答えよ。
問題2:「乾き果てた土地に涙を恵む者」の「涙」とは何か。漢字一文字で答えよ。
問題3:「鉛色の幕」とは何か。漢字一文字で答えよ。
曲名:主に祈る唯一のこと
歌詞:
一人じゃない私は
かげを忘れていた
頬に氷ふくんで
ぬくもり飲み込めた
来て私のところに
ただあなたに会いたい
一度だけの人生
一度だけの願い
輪舞曲のように
あの日のままでいい
一度限りでいい
一瞬だけでいい
来て私のところに
ただあなたに会いたい
一度だけの人生
一度だけの願い
乾き果てた土地に
涙を恵む者は
鉛色の幕を
ときに広げて
ときに切り裂く
羊を護るために
けれど火輪なんかじゃ
ぬくもり補えない
来て私のところに
ただあなたに会いたい
一度だけの人生
一度だけの願い
(問題1のヒント: 曲名の中に答えが含まれているよ!)
〇私(以下「A倉」と表記)とG君(以下「G」と表記)のコメント
07:22 G Q1.ナイル川 Q2.洪水 Q3.弾丸
07:32 G エジプト=トルコ戦争のポエムだな、A倉さんの教養が見えますね
10:10 A倉 曲名…
13:08 G 真面目に考えてみるわ
16:22 G Q1.主 Q2.雨 Q3.雲
16:22 A倉 普通に正解
16:23 G もう一捻りしてあげればよかった
16:24 A倉 まあ、この歌詞は凡庸なラブソングだろうし、ラブソングって別にシンプルでもいいと思うけどね。
16:24 G 露土戦争にこじつ…関連付けた答えにしてあげたほうが雅だったね、ごめんね
16:25 A倉 ぶっちゃけ根拠に基づいているなら強引な解釈も一興だとは思う。露土戦争を暗示する箇所って挙げれる?
16:27 G ロンド→十数回露土戦争が繰り返されたことの暗喩
16:28 A倉 「輪舞曲のようにあの日のままでいい」という文言なのでロンドは「あの日のままでいい」への修飾になってる(マジレスすまん)
16:28 G 乾き果てた土地→毎度毎度同じ場所で戦争するせいでバルカン半島はもうボロボロ
16:29 G あの日のまま→初期の露土戦争はトルコ優勢
16:29 G つまり国境を昔のままにしてほしいというトルコの願い
16:29 A倉 涙に対応してない!
16:29 G 涙は国民と兵士の血潮だよね
16:30 A倉 「来て私のところに ただあなたに会いたい 一度だけの人生 一度だけの願い」とか「ぬくもり」などから「二人でいれた日のまま」と解釈するのが自然でしょ。いずれにせよ、凄い発想力だと思う。確かに「血の涙」というフレーズは存在するね。
16:31 G 鉛色の幕云々→鉛玉の弾幕を拡げるロシア軍とトルコ軍の弾幕を切り裂くロシア軍
16:32 A倉 鉛色の幕の主語は「乾き果てた土地に涙を恵む者」ですよ!
16:32 G この歌は後半の露土戦争を表しているんだから
16:34 G バルカン半島に攻めこんできたロシア軍が自軍敵軍と関係なく血の雨を降らせる大攻勢を仕掛けている様を描いていると捉えるのが自然
16:35 G 羊を守る→バルカン半島の中のキリスト教徒を守る(建前)
16:36 A倉 その解釈だと「恵む」という動詞のニュアンスと合わねえじゃん!
16:36 A倉 絶妙な感じでツッコミどころがあるのはセンスが逆にいるよねえ。
16:36 G なんで?
16:37 G バルカン半島に血の雨を降らせるロシア軍は現地のキリスト教徒を守るという名目で弾幕を拡げたり切り裂いたりする。
16:38 G だけど戦火では我々トルコ軍は負けない!ってトルコ軍の意思表明でしょ
16:39 G 来て云々→手前らはトルコ軍の手柄首にしてやる、はよ首晒せ
16:40 G オスマン帝国らしい勇ましさの表明だぁ(恍惚)
16:40 G 恵みとはつまり戦功を表している
16:42 G 後期露土戦争にのぞむトルコ軍の将校がこの戦で武功を挙げてみせるという意気込み表明している情景が目に浮かびますね
16:42 A倉 普通の人であれば「ラブソングだね」で終わるところをこんなにもユニークな視点で鑑賞できるのはG君の才能
16:42 G (ラブソングでは)ないです
16:42 A倉 ミリタリーの要素皆無なのに露土戦争の歌詞と強引に解釈する発想は面白いが、やはり文法を無視しないと、こじつけをするのは難しい模様。
16:43 G は?無視してないが?
16:44 G 一人じゃない私→将校だから当然部下がいる
16:45 A倉 鉛色の幕の主語など色々と強引ではあるぞ…。まあ分かってて文法を無視してるんだと思うが。
16:46 G 影云々→平和ボケして戦争の気配を忘れていた
16:46 G 頬が云々→平和だったから冷たいビールだけで十分に日々の恐怖を飲み込めた
16:46 A倉 「戦火の影」とはいうよね
16:47 A倉 ビールじゃなくてウイスキーなどのほうが「氷」に合うかもね
16:47 A倉 てかさ将校と部下の関係に「ぬくもり」って普通いわなくね?それってBLじゃん!
16:47 G 来て以下四行→来いよロシア軍、俺の武功にしてやる
16:48 G 上司と部下も絆の比喩でしょ
16:48 A倉 絆という範疇なら仕事上での信頼感と言えるだろうな。だけど「ぬくもり」はちょっとBLチック。
16:49 A倉 そんなのが目標だったら「一瞬だけでもいい」とはならんだろ。「勝利よ永遠なれ」とかの方が普通かな。
16:49 G 日露戦争の広瀬少佐の「杉野はいずこ」の逸話を忘れたのか?
16:50 G
輪舞曲云々→昔の国境線に戻したいという想い
乾き果てた土地云々→攻めこんできたロシア軍
涙→敵味方問わない血の雨
鉛色の幕云々→ロシア軍の乱れのない戦術機動の比喩
羊を守る云々→異教徒からキリスト教徒を守るというロシア軍の建前
16:54 G けれど云々→ロシアのもたらす戦火では自分と部下を倒せはしないという見栄
16:55 G 見事に筋が通っている
16:56 G 見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない(ブロンティスト並みの感想)
16:56 A倉 主語がロシア軍将校という視点はなかったなあ
16:57 G トルコ軍将校が謳うんやゾ
16:57 A倉 オスマン帝国軍将校ってことかな
16:57 G 厳密に言うならそうですね
16:58 G 18世紀はオスマン帝国優位に進んだ露土戦争も19世紀に入るとロシアの近代化を原因としてだんだんと負けるようになってきた
16:59 G そんな情勢の中、老いた将校がかつての栄光を取り戻してみせるという気勢をあげるポエム
17:00 G 一度云々はもう年老いているから次がないことの比喩でしょ
17:00 G 目の黒い内に攻めてきてほしいってワケよ
17:01 G これでワイの正しさがわかったでしょ
17:01 G (ラブソングでは)ないです
17:02 A倉 いやぁ…批評を創造に高めた小林秀雄に匹敵するほどの発想力だったよ。私の予想だけど、ノストラダムスの大予言もこういう風に著者の意図とはどんどん乖離して読まれていったんだろうなあ…。
17:03 G 露土戦争の背景知ってれば普通に読めばわかるでしょ
17:03 G どう考えてもラブソングではない
17:07 G 作戦室で記憶より小さくなったトルコの領域を眺める老将軍
17:07 G 辺りを見れば手塩にかけて育ててきた直属の部下たち
17:08 G 今度こそ勝って昔の栄光を取り戻すという意気込みと反比例するかのような体調不良
17:09 G 迫る死期を感じとり、自分が死ぬ前にロシア軍を撃滅したいという思いが募る
17:10 G いつもいつもロシア軍はバルカン半島に血の雨を降らせ土地を乾きで満たすが、軍人である将軍にとっては戦功の恵みでもある
17:12 G キリスト教徒を守るという薄っぺらな建前では我々トルコ軍の結束は破れないという確信を抱く将軍
17:12 G だが死期の方がロシア軍より早いかもしれないという焦燥感はぬぐえない
17:13 G そういうポエムでしょ
17:13 G いやぁ見事に情景を言葉にできた
17:14 G これより正しい解釈はないね(ウットリ)
17:14 A倉 実際はロシア帝国の方が先に滅んだのだが、第一次世界大戦がオスマン帝国の衰退を決定づけたのは論をまたない。
17:15 G でも度重なる戦争の末バルカン半島は取られたからその点ではトルコの負けゾ
17:16 A倉 英国の三枚舌外交の(道義的な)罪は大きい
17:17 G 今の世界の問題の九割は欧米のせいで更にその内七割はブリカスのせいだぞ
17:18 A倉 しかし、あんだけ謀略を駆使して世界の頂点に立ったにもかかわらず、今や日本同様の衰退途上国になってしまった英国。
(なお、G君は17:18の私のコメントに対して「日本はクーデターレベルの政権交代が起こればまた復活するから」という趣旨の持論を展開している。)