〇解説

666magmaの曲。星新一のショートショートの名作『午後の恐竜』に由来する曲と見られる。

 

〇動画

午後の恐竜 (666magma-オーメンマグマ)

https://www.youtube.com/watch?v=lgoi49yV0tU

 

 

〇歌詞と英訳 (訳:A倉R郎)

 

君がいたから立っていた ×4

You existed here, so I was standing here.

 

もうすぐ全部終わるけど 誰のせいでもありません ×2

Everything will end soon, but this is no one's fault.

 

ジュラ紀の幻 ゆっくり動き出す ×2

Visions of the Jurassic period start to move slowly.

 

(guitar solo)

 

雨が10分後に降る ×3

It will begin to rain in 10 minutes.

 

二度と止まない雨になる ×1

It will never stop raining again.

 

ジュラ紀の幻 ゆっくり動き出す ×2 

Visions of the Jurassic period start to move slowly.

 

(guitar solo)

 

 

〇私見

最初、この曲をYouTubeで聴いたとき、「よく分かんない曲だな」と感じた。

日本語の歌詞の曲で、冒頭部から同じフレーズを4回繰り返すというのは不慣れと言うか、端正な印象を受けなかったのだ。

しかし、メロディのシンプルさに惹かれ、リピート機能で何度も聴いていくうちにあることに気づく。

「この曲、普通にいい曲じゃん」と。

適菜収氏もメールマガジンvol.42(2020年5月18日配信)で以下のように述べている。

 

高校生の頃、通学中にフランク・ザッパのライブ盤をよく聴いていた。
 当時、「ワカジャワカ」と「グランドワズー」がセットで1枚になった日本版CDがあって、解説には次のような話が書いてあった。
 解説を書いたアメリカ人の音楽ライターは車の中でいつも「ワカジャワカ」「グランドワズー」をかけていた。そのライターの友人は、ザッパの音楽をまったく理解できなかった。なぜこんな変な音楽を聴くのかと。
 あるときドライブしていると、突然その友人が言った。
 「今気づいた。これは最高の音楽だ」。
 聴き続けているうちに、気づくことはある。だから、変に選り好みはせずに、いろいろ聴いたほうがいいですね。

 

歌詞についてだが、由来になったと見られる星新一の『午後の恐竜』の世界観がミニマムな文字数で描写されており、シンプルさの妙というものを感じた。

特に「もうすぐ全部終わるけど 誰のせいでもありません」というフレーズは興味深いと思う。

原作『午後の恐竜』では、狂人と化した一人の軍人が核兵器を全世界に向けて発射したことが原因となって、地球全体が滅んでいくわけだが、この曲では「誰のせいでもありません」と歌われている。自分を含め、多くの読者は「全部が終わる(=地球が滅ぶ)のは、狂人と化した軍人のせいだろ」と感じてしまいがちなので、このフレーズは極めて独創的な歌詞だと言える。

 

しかし、こんなに良い曲なのに、再生回数がたったの2550回で驚いた。もっと評価されて然るべきだと思う。しかも評価が「GOOD1にBAD2」というものだったので、呆れてしまった。

この動画をYouTubeにアップロードした「666magma公式チャンネル」は2人しかチャンネル登録者がいないようでもっと驚いてしまった。

チャンネル登録のリストを見ると、「デイブ・グロール」のトピックやサウンドガーデンといったチャンネルがあり、「666magmaはグランジとの親和性が高いのかも」と思った。

 

いずれにしても、良い作品を造り出すクリエーターはもっと評価されるべきだろう。