セオドアがキャサリンとの別れを振り返って『どちらかが成長するとどちらかを不安にさせる』という言葉通りにサマンサは最終的に旅立ってしまった。

サマンサはセオドアを〔人として愛したいから〕成長していったけれど、いつしか2人の関係性を追い越してしまった。

そんな別れに強く共感した。
思い出された。

OSと人との恋を描いた映画だけれど、限りなくこれは恋愛映画だった。
結ばれないことが前提の悲恋ではなく、むしろ深いところまで繋がりあった純愛物だった。

私は日本語吹き替えで観たけれど、サマンサの声が美しくて、透明で、何度も何度も切なくさせられた。

男と女。
男とOS。
それぞれを対比するように言葉は違うやりとりが一度ずつ繰り返される。

『君には分からない』と言ったセオドアに、キャサリンは『なんで!?私が怖いの?!』と怒りと悲しみと非難の表情を見せた。
セオドアは何も言えなかった。

『なんでそんなひどいこと言うの!?』と言ったサマンサには、彼は時間をかけて考えて。
『怖くて何も言えなかった。でも同じことは二度と繰り返さない』と答えを出した。

この答えこそ。
サマンサはセオドアにとってOSではなく、ひとりの女性であり、恋人であるという答えだったと思う。
次の恋愛をしていたからこそ、出せた答えだった。

OSとの恋愛は、真剣な自分との対話だ。
相手が大きく心を揺さぶってきたり、肉体で誘惑してくることはない。
正直で純粋な人だけが陥ることができる恋だと思う。

自分を愛していて、繊細な心の持ち主だけが行う、神聖な行為だ。

究極の恋は肉体を持っている限り不可能だけれども。
即物的に生きながらでも、そんな恋をすることを少しでも忘れずにいたい。

ひと通りの恋をし終わって、恋せずに生きていくか、最後にもう一度だけ恋をするか、悩んだ時にオススメの映画。



評価:
★★★★☆