今日も暑い。
昨日の雨で
蒸し暑さが酷くなったみたいだ。
午前中だというのに。
タオルで額の汗を拭った。
寺院までの坂を二人で登る。
この暑い中、選択をミスったかと思いきや隣を歩く潤は
「テレビじゃこんなに坂が長いなんてわからないね。」
「あとね、さっきお土産屋さんの手前に陶器のお店があったんだけど、あとで見に行きたいな。」
「かき氷のお店も有名みたいだね。」
暑さよりも楽しんでくれているようで
俺も自然と笑顔でいられた。
汗は止まらないけど。
坂の上にある寺院は有名な場所だけあって、これだけ暑くても観光客は多い。
その寺院のすぐそばに
小さな神社がある。
『縁結びの神』と彫られた岩があって
俺は一人ドキドキしていた。
潤の目にも絶対入ってるはず。
目に入って潤がこれをどう思うのか。
なんなら男同士で来たというのに
縁結びを選んだ俺のセンスも
疑われたりしているんだろうか。
別にそこに意識しなくとも、
この有名な寺院を訪れる理由は
観光として成立するのだ。
ビクビクするな、俺。
「縁結びだって。」
潤の言葉にビクッとした俺を見て
潤は首を傾げた。
「違うの?さっき書いてたよ?」
「うん、合ってる合ってる。」
「願掛けしていこうよ。」
「えっ?!」
「せっかく来たんだから。」
冷たい水で手を清めて
お地蔵さんに挨拶するように
手を合わせる潤。
そこからまた本殿まで歩いて
潤がお賽銭を納めた。
俺も慌てて財布を取り出す。
黙って手を合わせる潤が気になって
自分の願い事が覚束ない。
願え俺!
願いはひとつだろ!
隣で手を合わせる潤の睫毛の長さに見惚れてしまって
潤が目を開けたと同時にギュッと目を瞑った。
次に目を開けた時には
潤が少し後ろで待っていてくれた。
「翔さんお願いできた?随分長いお願いだったね。」
「そ、そっかな。」
潤が何を誰とのことをどうなることを願ったのか気になってて、自分の1つしかない願い事を懇願することが出来なかったとは言えない。
だけど、俺は!
日頃から祈ってるんだ。
そんな俺を神様が無碍にすることはないと信じてます。
信じてますよ、神さま!
「潤こそ、お地蔵さまにまでお願いしてなかった?」
「うん。今あるご縁を結んでくださいってお願いした。」
「今あるご縁?」
「うん。今あるご縁。でも人に言っちゃうと叶えてもらえないんだっけ?ダメだダメ。」
誰との縁だよ!!!
気になんじゃんか!!
二宮なのか、
それとも俺の知らない誰かなのか。
「神さまは叶えてくれるかなぁ。ふふふ。」
笑いながら潤が歩いていく。
俺は暑さ以上に吹き出る汗を拭う。
「潤っ!」
俺に振り返る潤も汗をかいていた。
「どうしたの翔さん。」
「その願い事さ…、」
「うん。」
「叶うと…いいね。」
「…そうだね。」
「叶ったらさ、またお礼参りに来ような。」
「一緒に?」
「イヤ?」
「ううん。そうだね、来られたらいいね。」
俺じゃ叶えられない?
聞こうか迷う。
聞けないまま。
潤は先に歩き出した。
「あ、潤ッ待って!」
振り返る潤。
「今あるご縁って、その願いって、それってさ、」
俺がもごもごと言い淀んでいると
潤がフッと微笑んで。
「神様や誰かにお願いするより自分次第かななんて思ってるんだけどね、俺は。」
そう言って
くるっと前を向いて
また歩き出した。
「さ。現実に帰んなきゃね。」
現実現実。
