「あ潤?土産ありがとね。」
「気に入ってくれた?」
「うん。いい音する。」
「もう吊るしてくれたの?」
薄いブルーのガラスで出来た風鈴が
智の店に似合うんじゃないかと思って
選んだ。
旅行で買ったお土産が
智の手元に届いたらしい。
「あとカズ使ってるよ、茶碗。」
「ほんと?ちゃんとご飯食べてるならいいんだけど。」
俺が東京に出てくる前から
実家で使っていたカズの茶碗は
少し欠けていたけれど
「まぁまた買い直すよ」
と言っていたものの
そのままになっているだろう
という俺の読みは当たっていたようだ。
「旅行は?楽しかった?」
「うん。」
「翔くんも土産送ってくれたんだよね。」
「え?そうなの?知らなかった。」
「食べもん送ってくれたから助かった。」
「ふふふ。そんなギリギリの生活だったんだ。」
「金銭面っていうより料理しなくていいやつ。」
「そっかそっか。」
「楽しそうだったな。写メ見た。」
「あのホテルの?」
「それ以外も翔くんが送ってくれたよ。」
「え!そうなの?他のも送ってるなんて聞いてない。」
「いい顔してたよ潤。」
「…そう?」
「うん。可愛い。」
「可愛くないよ。」
「翔くんの隣にいる潤は可愛い。俺やカズといる潤も可愛いけど。」
「ふはは、意味わかんない。」
「結局可愛いんだよ潤は。あ、カズ帰ってきた。ちょっと待って。」
電話の向こうで
「ただいま。誰と喋ってんですか」
「代わる。はい。」
会話が聞こえてガサガサした音の後。
「潤くん?」
「うん。…久しぶりだね。」
久々のカズの声。
二宮のとも違う声。
潤くん、
と呼ぶカズの声が耳に懐かしい。
「茶碗ありがとね。潤くんが買い換えろって言ってた茶碗やっと捨てたよ。小さい頃からずっとお揃いの茶碗だったのにね。」
「…だから欠けたまま使ってたの?」
「……まぁね。」
「あのね、実は俺もね。」
「うん?」
「お茶碗買ったんだ。」
「え?」
「ずっとお揃いで母さんが買い替えてくれる時は一緒だったからさ。なんとなく…。」
気まずさというか、カズが引いてないか気になって声が弱くなる。
「ふふ。じゃあ今もお揃いで食べてるんだ。やっぱり俺ら一緒じゃなきゃね。」
「うん…。」
カズの優しい声に胸が熱くなって
涙が出そうになる。
この気持ちはきっと懐かしさや聞き慣れた声に心が反応するんだ。
「こないだ翔さんから、そっち行った時の店を何軒かピックアップして送ってくれたよ。」
「そうなの?この旅行の時もね、翔さんが手配してくれて。」
「マメだねぇ。」
「旅行会社に友達がいるって言ってた。」
「送ってくれた店も友達が経営してるとか、ツレがどうこう言ってたよ。」
「顔が広いんだね。地元だからかな?」
「何者なんだってね。で?その翔さんプレゼンツの旅行はどうだった?」
「楽しかったよ。めちゃくちゃ暑かったけどね。」
「写真…見たよ。」
「うん…、智から聞いた。」
「いい顔してたよ。仲よさそうでよかったよ。」
「べ、別に、フツーだからッ。」
「そっかそっか。フツーにしてても潤くんは可愛いからね。ふふふ。」
「智と同じようにからかわないでよ〜。」
「潤くん…、潤くんが手を引かれるのを待っちゃうのは兄貴や俺のせいかもしれない。だけどもう大人だから、自分で選んで手を握ったっていいんだよ。」
「カズそれってどういう…」
「あ潤くん、アニキが替われってうるさいから。またね。」
「待って、カズ…、」
「潤?」
「あ…、」
「なに?どうした?」
「なんでもない。」
もう少しカズの声を聞いていたくて。
ううん。
翔さんの隣にいる俺の顔って
どんな顔なのかカズに聞きたくて。
ううん。
俺が選んで握ろうとする手は
カズも間違ってないと思う?
俺はカズがいなきゃ
自分の答えすら出せなくて
成長してない自分に笑える。
プププ。笑っとこ。
