打合せが長引いて、そのあと上司と色々話し合っていたら俺が店に着いたときには相葉と潤は随分と上機嫌だった。
「翔ちゃんおつ〜」
「おつ〜…って、おつってなんだよ!フハハ。」
「残念ながら料理なくなっちゃったよ!さっきまで残してたのに。ね、潤ちゃん!」
「そうだよ〜。翔さん来ないんだもん。勿体無いから相葉くんと食べ尽くしちゃったよ。」
「もう食べらんないよね、潤ちゃん!」
「うん!食べらんない!満腹っ!」
「じゃあ店変える?」
俺が提案した案に相葉が反応する。
「あ、俺明日早いんだっけ?」
「俺に聞く?相葉の予定まで把握してないよ。」
「だよねー。そう!俺明日早いからここ一軒で勘弁っ!翔ちゃんも潤ちゃんもごめんねっ!」
相葉が両手を合わせる。
そそくさとお金を置いて
荷物を抱えて店を出て行った。
「…相葉くん帰ちゃったね。」
「じゃあ2人で行こっか。」
店にタクシーを呼んでもらってる間に
近くの店をスマホで探していると
潤が俺のスマホを覗き込んで
しばらく黙って見つめてたあと
「調べなくていいよ。」
「どっか店知ってる?」
「うち。」
「え?」
聞き返すと同時に店の人からタクシーが着いたことを聞かされて席を立つ。
「二宮は来たけど、翔さんとはうちで飲んだことないし。大したものないけど。」
前に二宮とウチ飲みしたことを聞いた俺が引きつった返事をしたことを
どうやら潤は気づいていたようだ。
引っ越し以来かもしれない潤のマンションに入る。
何もなかった部屋は
生活感が少なからずあって
潤が生活してるんだなぁなんて
キョロキョロと部屋を見回してしまう。
キッチンから潤が運んできたのは
旅行へ行った時
手付かずになってしまった酒だった。
置いて帰るのも惜しいし
今度智くんやカズが来たとき用に
ここに送っておいたのだ。
「もともと向こうで2人で飲むはずだったんだから開けちゃっていいよね?」
ソファを背もたれに
隣に座った潤が注いでくれた酒で
喉を潤す。
注いでくれる潤は飲んでなくて
「さっき結構飲んだから。」
って水を飲んだ。
「こないだ電話した。智とカズと。」
「お土産無事に届いたって?」
「うん。早速使ってくれてるって。」
「よかったじゃん。潤も使ってるの?」
俺の言葉に潤が目を大きくした。
「…知ってたの?俺がお茶碗買ってたの。」
陶器のお店で潤が色違いの茶碗を
手にして眺めているのを見ていた。
配送を手配しているとき
その茶碗がひとつだけ入っていて
潤が手にしていたもう片方は
潤の物なのだと思った。
頷くと潤は気まずそうにして
「別に変な意味じゃないからね。」
「わかってるよ。」
「小さい頃からずっと買い換えるタイミングが一緒だったから。」
「わかってるって。」
「ほんとだよ?」
「ははっ、わーかってるって。」
「…俺、カズのことは。」
眉を下げる潤。
聞いてもいいのだろうか。
お互い口を噤んでしまったところから
思い切って切り出す。
「…もう、いいの?カズのこと。」
潤は目を泳がすことなく。
「前向いてるよ、俺。だからお茶碗買ったのは本当に双子の性なんだよ。」
前を向いた潤には俺に賭けたことも
過ぎ去ってしまっているのだろうか。
「あ、風鈴もね、早速店に吊るしてくれてるんだって。ほら見て。」
スマホの動画を再生させて
隣に座る俺に見せてくれる。
2人で動画を覗き込む。
夏の日差しにガラスがキラキラして
涼やかな音が響いて
智くんが動画を見てるであろう潤に
手を振って動画は終わった。
「智くん既に随分焼けてるね。」
「海の家開けてないときは釣りしてるから年がら年中智は焼けてるよ。カズは真っ白。」
「潤もね。」
「顔は似てないけど日焼けに弱いとこは同じなんだよね。遺伝子が同じなんだろね。」
ふふふって笑いながら顔を上げた潤は
俺との距離の近さに身を引いた。
「ごめん、なんか近かったね。」
親指で鼻の頭を掻いて
恥ずかしそうに顔を逸らした。
近くない。
言う前に潤が「そうだ。」と立ち上がってリビングを出て行く。
すぐに戻って来た潤が手にしてたのは
袋に入った花火のパックだった。
「カズと智がね、送ってくれた。」
「え、今すんの?バルコニー広いけど流石に花火は…、」
バルコニーが広いのも潤のご家族の意向というか、甘々なのか、簡単なテーブルと椅子が置けるほどの広さがあるのを内見を一緒にした俺は知っている。
知ってるけど、流石に花火は…。
「これ今度来たときにみんなでしようと思って送ってくれたんだと思う。バルコニーじゃ出来ないし先にしちゃったら智が怒るよ。」
そう言いながら潤の手元は
花火の袋から離れない。
「だからこれだけ。」
潤は袋から取り出したのは
線香花火。
肩を竦めて笑いながら
潤はバルコニーへ出て行く。
俺もグラスを持ってついて行く。
大きなバルコニーに続く窓を
開けたら夏の夜の外気はまだ暑い。
翔さんのビジュアル安定期。ああ、ZERO浮腫みが懐かしい。贅沢な悩み。
