バルコニーのテーブルに
飲んでいたグラスを置く。
潤も水の入ったペットボトルを
置いた。
線香花火を持った潤は
バケツの横にしゃがんで
俺にも差し出すように腕を伸ばした。
「翔さんとこの間花火見られなかったから。規模は随分縮小されちゃってるけど。」
へへへって笑う潤。
ああ、
この間花火が見られなかったことを
潤は気にしてくれているんだ。
「ありがと。」
差し出された花火を受け取って
潤の隣にしゃがむ。
そっと火をつけたら
小さく火花を散し始める。
どことなくお互い黙って
その小さな花火を見つめる。
話すと火種が落ちてしまう気がして。
きっと
潤もそう思っているんだと思う。
「…キレイだね。」
潤が手元を動かさず
小さく呟く。
俺も手元を動かさないように
そっと横にいる潤を見つめると
小さな花火の明るさに
ほんのりと照らされていた。
前に2人でした花火よりも
小さな小さな花火だけど
それでも潤の瞳に
キラキラと映るのは変わらない。
「キレイだな。」
線香花火も手持ち花火も。
大きな打ち上げ花火も。
全てのその一瞬の輝きは儚く美しい。
だけどそれより俺の心を揺らすのは
潤しかいない。
火種が落ちずとも
花火の火は小さくなって消えていく。
「線香花火って小さな打ち上げ花火見たいだよね。しかもこんな小さな一本なのに色んな花になって。」
「来年はどこかの花火大会に行こうか。…2人で。」
「翔さんは…大きな花火が見たい?」
「潤と一緒に見られないジンクスを打ち破りたいかな。」
「俺は…線香花火でいいよ。」
やはり花火大会っていうのは
潤にとって特別で
カズとの思い出のものなのだろうか。
「こうやって大事に火種を落とさないように静かに翔さんと並んで小さな花火を見つめてるこの時間が穏やかで俺は好きだなぁ。」
「花火大会は…、カズと2人の思い出だから?」
「そんな風に聞こえた?」
潤は眉を下げて俺を見ると俯いて
花火に視線を戻した。
俺は潤が傷付く言い方になってしまったのかが気になって
自分の持っていた線香花火が小さくなって静かに消えたことに気付いてなかった。
「ラス1だね。」
バケツに数本の長手が入れられていで
気付けば最後の一本になっていた。
おおういっ!!
もうなくなってるやん!!
え?なになに?焦らされてる?
え?どんでん返し?!
