腰を掛けられる場所を見つけて
並んで腰掛けた。
絡めた指は離すことなく
きゅっと握り合って。
初めて出会った夏。
俺が握った手を潤は振り払った。
抱きしめた俺を押し返した。
好きだと言う俺に
やめてほしいと潤は言った。
あの日
『手を繋いで花火大会を一緒に見る』
という約束は完全なる一方通行だった。
あの花火大会は
カズからもらった花火になり
智くんが送ってくれた線香花火になり
そして
やっと手を繋いで
潤と花火大会に来ることができた。
ドーーーーンッ
パァーーーンッ
打ち上がる花火。
「わぁ…。」
俺も空を見上げて花火を見るけれど
すぐに隣にいる潤を見つめる。
この夜空を彩る花火を見て
想いを馳せる相手。
それはきっと、俺じゃない。
俺じゃない誰か。
その誰かはきっと。
「潤…。」
「ん?」
潤は首を傾げて俺を見つめる。
「辛くない?」
「どうして?」
「…俺が半ば無理矢理連れて来たから。」
「ふふふ。うん、そうだったね。最初に出会った夏はね。」
「今日は?」
「今はただただ打ち上げ花火がキレイだなぁって。」
潤は空に上がる花火に視線を戻した。
自らカズのことを持ち出す勇気もなくて俺も花火を見上げた。
しばらく黙って
2人で花火を見上げて
気付く。
握っていた潤の手。
潤によって握り返されていることを。
打ち上げ花火がフィナーレに向かって
花火が上が間隔が短くなっていた。
ドーンドーンと身体に響く中
潤の声が耳に届く。
「翔さん、約束を待っててくれてありがとう。」
「え…?」
「手を繋いで花火を見るって。」
潤も覚えていてくれたことが
泣きそうになるくらい嬉しかった。
一方通行な約束は
一方通行でなく潤と繋がっていて。
「なんか何も考えずに、ただキレイな花火をただキレイだなぁって見ていられる。」
潤は俺でない誰を想うことなく
花火を楽しんでくれていたんだ。
「翔さんが隣にいてくれるからだよ。」
「潤…。」
「ほら翔さん一番いいところだよ。」
フィナーレを迎えた花火が
夜空いっぱいに花を咲かせて
辺りを明るい光で包む。
その明るさは一瞬で
パラパラと最後の花火のカケラが
明るさを失うと
再び辺りは暗やみに包まれる。
「あー終わっちゃった。」
「だな。あっという間だよな。」
「花火は一瞬だけど、翔さんはこれからもずっと俺と一緒いてくれる?」
「…それは俺のセリフ。」
暗くても潤がまっすぐ俺を見て言ったことがわかるくらい潤の視線は俺を捉えていた。
「俺は一緒にいたい。」
「それも俺のセリフ。」
「そのセリフ、言ってくれないの?」
潤の言って欲しいことはわかってる。
こうやってちょっと照れてるくせに
強請るとこも。
「ずっと一緒にいような。大事にするから。好きだよ。」
「…同じセリフじゃないじゃん。」
「あれ?そう?潤の心ん中のセリフも言ってみたつもりだけど。」
俺が言うと
潤の大きな瞳は弧を描いた。
「あと、もう一つ言っていい?」
「なに?」
「これは俺の心ん中のセリフだけど。」
「翔さんの?なに?」
「今日会ってからずっと思ってたんだけど。」
俺は潤の耳元に顔を寄せて言った。
「キスしたいくらい可愛い。」
潤は大きな目を更に大きくして
俺を見た。
驚いた顔をしてるついでに
チュッと触れるだけのキスをした。
「翔さん…。」
暗くてハッキリ見えないけど
真っ赤になってるんだろうな。
人も随分減ってきた。
腹も減ってきた。
「なんか食ってく?」
返事しないまま先に潤が立ち上がる。
そして首を横に振る。
あーそっか。
「慣れない浴衣だもんな、疲れたよな。メシはまた今度にして今日は帰ろうか。」
また潤は首を横に振った。
振り返ってチラリと俺を見て俯いて言う。
「早く帰って、続き、シたい。」
「!」
結局潤の方が一枚上手で
俺は骨抜きにされるんだ。
何やら思いつきで書き続けてみる。
骨抜きになってるのはコッチのセリフですけどー!
