役所で勤める弟から聞いた話をもう一つ。
役所には毎日色んな人が来るらしい。私などは何かないと行く事がないのだが、その人は割と頻繁に役所の窓口に来る人だったのだという。
それでも窓口で暴れたり、文句をいう事もなく淡々と用事を済ませて静かに帰っていく優良な市民の方なのだが、強烈なインパクトで伝説となっているらしい。
「その人さぁ、自作したカツラをかぶって窓口に来るねん」
「自作❓」
「うん。でも、姉やんが今想像しているカツラとは絶対違うから。だって、厚紙にマジックで髪の毛描いてるねん。」
「え❓どういう事❓」
「適当にホッチキスで厚紙を留めて帽子みたいにして、その日の気分で七三やったり、パーマやったりをマジックで描いたのを被ってくるねん。」
「…それはまた強引な…。いくら器用でもちょっと無理があるんちゃうん?」
「あるに決まってるやん!頭との間パカパカしてるんやで!マジックの間から普通に厚紙見えてるし」
「その人気になれへんのかな?絶対ジロジロ見られるやん」
「いや、その人はホンマに普通。窓口で応対する俺らがどこを見ていいのかわからんようになって、挙動不審になってる」
そう、色んな人がいる。
他人からどう見られようが、自分でそれが良いのだと認めて堂々としていれば、それが正解なのだと思った私だ。