母の認知症が進み、実家のゴミ屋敷度合いが半端なくなってきた。それでなくても本家の実家は既に、150年近く経っていて、小さな家に最高で8人住んでいた事もあり、今は母が一人しか住んでいないにもかかわらず、母の物ではない訳のわからない物であふれかえっていた。
特に写真は見た事もないような人ばかりが写っている白黒の写真が大量に出てきていて、いつの時代の誰なのかも分からないのだが、それさえも母は断固として処分しないといいはるのだった。
流石にカラーの写真になると私でも分かるようになるのだが、その中で2枚の結婚式の写真にまたもや私は首をひねった。
1枚は母方の親戚一同が写っているので、親戚の誰かの結婚式だというのは間違いないのだが、花婿花嫁の顔に見覚えがない。
花婿は見た事がないので、多分、文金高島田のカツラをつけて白粉につけまつげと究極の仮装和装の花嫁が親戚の誰かだと推測できるのだが、それにしても花婿の顔に見覚えがないのは解せないと母にその写真を見せると認知症にもかかわらずすぐに
「Mやん」断言した。
「え?それってまさか😱」
「前の旦那さんとの写真やん」と続けた。
旦那さんの顔に見覚えがないはずだ。Mは一年もたたずに離婚し、私がMの旦那さんを見たのは結婚式の2時間だけなのだ。しかもMは再婚して今は別の旦那さんと幸せに暮らしている。
「なんで、こんな写真おいてるの⁉️」
「もったいないやん」
「いやいや、これは処分せなあかん。黒歴史や」
「絶対いやや。おいといて」
私から写真を取り上げ大事そうに元の棚に戻す母を見ながら、こんな調子で片付けられるのか?と絶望的な気持ちになる。ただ、どんなに困難でも、あの写真だけは処分してあげようと心に誓う私だった。