我が社では30年勤めた社員を集めて割と豪華な表彰式典を行うのが慣例だ。昔はホテルで立食パーティーだったが予算が年々削減され私のときは二段重ねのお弁当が配られた。日頃、コンビニかスーパーの安いお弁当しか食していない私には、充分すぎるほどのお弁当で私は

「美味しい!美味しい!」と大絶賛しながらお弁当を食べた。

その後、宝塚歌劇団の華麗なるショーを堪能して大満足の表彰式典が終わろうとしたその時、突然会場にアナウンスが流れたのだ。

「ご出席の皆様にお知らせさせて頂きます。本日、お配りさせて頂きましたお弁当ですが、消費期限切れているとの申告がありましたが、表示間違いですのでご安心ください。決して期限は切れておりませんのでご安心ください。」

大劇場がその日一番のどよめきにつつまれた事はいうまでもない。

人間誰しも間違いはある。済んでしまった事をあれこれいうつもりもない。その時、私が強く思ったのは、食べるか食べないかを選択できる段階ならまだしも、お弁当を食べて数時間たって既にあらかた消化されてしまった段階でそれを知らせる必要があったのか⁉️ということだ。自分で購入する時ならいざ知らず、表彰式典というおめでたい席に出るお弁当の消費期限なんか確認する人のほうが稀だ。

知らないままの方が幸せな事もある。ずっと知らないままでいさせてほしかったと図らずも長年連れ添った夫に浮気相手がいた事を知った妻のような台詞が脳裏にこだまする私だった。