新入社員が入社する時期になると思い出す。あれはまだ、私がまだ30代だった頃、不況続きで長年採用がなかった新入社員が入るという情報が入った。
しかも男性社員だという。女子社員の多い総務部は盛り上がった。特に配属が決まった人事係の女子達のテンションのあがり方は凄くていち早くツヨシという新入社員の名前を入手し、ツヨポンというあだ名まで決めていた。
「ツヨポンどこに座ってもらう?💕」
「やっぱり、真ん中じゃない?❣️両方に聞けるやん❣️端っこはかわいそうやん💕」
「私のヒザの上に座らせてあげよっかな💕」
「ええ?じゃあ、私バックハグしながらパソコン教えるわ😍」
当時、総務の人事係は才色兼備な女子がそろっていたのだが、社内から憧れられる彼女達から発せられるオヤジ顔負けのセクハラ発言に同じ部屋でいる他の係の私達はツヨポンが耐えられるか⁉️と心配していた。
しかし、その心配は無用だった。
用意された真ん中に座ったのは、60歳で定年退職し、再雇用されたシニアスタッフだった。
昨日まであれほどテンションの高かった人事係は水を打ったように静まり返りまるで新しい人など入らなかったような新年度初日を迎えていた。