30年前は、まだスマートフォンなるものはなく私達は、みんな携帯初心者だった。

そもそも携帯にカメラなどついておらず、メールが出来るというだけで画期的だと今のソフトバンクの前身ボーダフォンを選んだほどだ。

カメラもないので当然QRコードもなく、赤外線通信もなく、私達はメール交換の度にアドレスを地道に自分で打ち込むという気の遠くなるような作業を繰り返していた。

なので、長いアドレスだと本当に大変で母が

【心はいつも日本晴れ】というアドレスを使っていた時は、入力するのに心が雨模様になるわ💢と思った。

それに反して、弟は姓に【です】をつけただけの簡単なアドレスだった。私は嬉々としてそのアドレスを登録し、

『登録したでー‼️』と送信した。しかし、いつまで絶っても返信がこない。

一日待ってから私は再度

『ちょっと!なんで返信してけーへんねん⁉️』と送信した。

しばらくして、やっと弟から

『どなたですか?』という返しが来た。

どこまで失礼な奴なんだと私は矢のような返信を返した。

『あんたのお姉さまじゃ‼️ボケ‼️』

するとまた一日以上あいてから

『アドレス間違ってませんか?』と返信が来た。

自分の返信が遅い理由を他人になすりつけるとは何事かと私は

『まちがってないわ‼️アホ‼️』と返信した。

すると今度はすぐに

『アドレス間違ってると思うんですが…』という返信がきた。

私は、付き合いきれんわ💢と返信せずにいたのだが、その週末に実家に帰った時に弟が

「アドレス教えたのになんでメールしてけーへんねん❓」と聞いてきたので驚いた。

「メールしたやん。返信してきてたやん」

というと弟は

「はぁ⁉️俺してないで」というではないか。

「あんたのアドレスって、名前の最後にデスってついてるだけやろ?」

「いや、ダス」

「ええっ⁉️」

私は心底青ざめた。

間違ってメールをしただけではなく、会ったこともない赤の他人に、アホボケ呼ばわりしたのだ。

その後、私は慣れない操作を駆使して、今までの人生で一番長い謝罪のメールを送信した。

相手からは

「いえいえ楽しかったですよ。また間違ってください。」という大人な返信が届き、さらに落ち込む羽目になったのだった。