結婚式でネタをされたくないため職場の誰にも内緒で電撃結婚をしたK先輩、そして、ネタ披露を阻止されたY先輩がリベンジパーティをすることになったと言うのが前回の話だ。

K先輩の電撃結婚背任被疑事件の公開裁判を新婦の前でするというのがリベンジだったのだが、これを考えたY先輩の誤算は、【笑いに持っていけば全て許される】という思い込みとリサーチ不足だった。

K先輩が約束通り奥さんを会場に連れてきた。小柄で恥ずかしそうに微笑む奥さんは、明らかに私達とは違う上品な人種だった。そして遠慮もなくグイグイと距離を縮めようとする私達に戸惑っている様子がみてとれた。

しかし、今更後には引けず、そのままリベンジパーティは強行突破された。奥様との馴れ初めからどこが好きになったのか等をみんなの前で検察官になりきったY先輩により暴かれていく。時々、弁護人のB先輩により「裁判長!今のは本件と何の関係もありません!」と言った救いの手が差し伸べられるのだが、2人が晒し者になっている事に変わりはなかった。恐ろしかったのは、途中から奥さんの笑顔がこばわっていき、最終的には全く笑わなくなった事だ。誰もがヤバいと思ったもののやめる訳にはいかず私たちは冷や汗をかきながら最終判決へと突入した。裁判官役の私はピコピコとおもちゃのトンカチを叩いて判決の台詞を厳かに言った。

「判決を言い渡す!被告Kを勝手にしやがれの刑に処す!」

その途端、K先輩が「そんな‼️嘘だ‼️」と自分の台詞を叫び、パーティ出席者はドッと笑って拍手した。私はピコピコピコピコ❗️とトンカチを叩き

「静粛に‼️K.前に出るように。」と告げると

K先輩はうなだれながら前に出てきてマイクを受け取った。沢田研二の【勝手にしやがれ】のイントロが流れ出す。その途端、K先輩は「タラララララ♪」とイントロから歌い出した。そう!この勝手にしやがれは、K先輩の十八番なのだ。歌詞の部分だけでなくイントロ、間奏全てをこぶしをまわしながら最初から最後まで歌い踊るのだ。私も初めてK先輩の勝手にしやがれを聞いた時は、日頃寡黙で冷静なK先輩とのあまりのギャップに、誰かが乗り移っている😱と思ったほどだ。恐る恐る新婦の方を見ると

目が見開き口があんぐり開いていた。…ですよね😱

今後の新婚生活に支障が出るかもしれないほどの衝撃が新婦を襲っているのは明らかで、首謀者のY先輩を見るとヤバい😱という顔でやはり新婦の顔を凝視していた。

勝手にしやがれをかつてないほどのパフォーマンスで熱唱したK先輩は呆然としたままの新婦と帰って行った。結婚式を内緒にしていたK先輩に復讐しようとしたY先輩は新婦の真顔が怖くてパーティを楽しむどころではなかったらしい。

ちなみに、K先輩は子宝に恵まれ今でも幸せな夫婦生活を送っている。