先日、日舞の発表会に出た。そもそも舞台に出る実力など皆無にもかかわらず、怖いもの知らずの若い子が舞台に出てみたいけど1人じゃ無理だと泣きつかれた師匠が白羽の矢を立てたのが同じカルチャーセンターで習う同じく実力が皆無の私だった。

師匠も舞台に立つなどまだまだだとハッキリ言えばいいのに断れずに、私に「これも経験だから」と言ってきた。上下関係の厳しい伝統芸能の世界での師匠からの話は断るという選択肢が残されておらず私は真っ青になりながらもその話を受けて、ものすごく有名な舞台でお遊戯会のような踊りを披露することになった。

当日、私の母や弟家族といった親戚一同は、真ん中の列の最前列に全ての席を使って陣取り、師匠の踊りを堪能している様子がガンガン送られて来る写真で確認できた。日舞になんの興味もなかったのに最前列で見るとは意外だなぁと思いながらも楽しんでいるなら良かったとホッとした。

それから約3時間後に私の順番が来て、扇こそ落とさなかったものの実力は如実に出る結果となり、激しく落ち込む私の所に来た親戚は、身内ならではの

「こんな凄い舞台でよく恥ずかしげもなく踊ったな」とか「汗凄かったな!」とか「髪の毛あげたらおばちゃんやな」と好き勝手な事を言うのだった。

私はくそーっと思いながらも

「最前列で見てくれてたんやな。日舞興味あったん?」というと母が

「ちゃうやん!あんたが扇を飛ばして客席に飛んできたらすぐ拾って渡せるようにスタンバイしとったんやん!」と言った。

なんと、親戚一同は私の晴れ姿を見にきたのではなく、私の扇を拾うために最前列を確保していたのだった。そして、弟からはその後、下から見上げた鼻の穴がよく見える一番撮られたくない角度での冷や汗びっしょりの舞台写真が何枚も送られて、さらに私を落ち込ませたのだった。

もう二度と舞台に立つなどという大それた事はするまいと心に誓っていた私だったが、いつかリベンジを果たし親戚一同を見返してやらねばと思ったのだった。