私の家は貧乏だった。

小学校の高学年の時に父はリストラにあった。

古い一軒家には雨が降ると家中に雨漏りがした。

高校になってもTシャツしか服を持っていなくてお洒落とは縁遠い青春を過ごしていた。

そんな我が家のお年玉はただ右から左へ流れていくものだった。

私の父は7人兄弟で、その兄弟も子沢山だった。

私達は祖母と住んでいたため、お正月になると叔父や叔母と共に従兄弟達がワンサカ帰省してきて、大騒ぎになっていた。

お正月なので、帰省した叔父や叔母からお年玉をもらうのだが、母に部屋の隅に呼ばれて

「もらったお年玉出しなさい」とカツアゲされて

そのお金は目の前で袋だけ変えられて従兄弟に返されるのだった。

子供の頃からずっとそうだったので、小さい頃はお年玉とはそういうものだと思っていたのだが、10歳ぐらいになると友達が「お年玉で〇〇を買った」などという話を聞くようになり、お年玉って中のお金をもらえるんだとビックリした。

しかし、結局、成人するまで我が家が金持ちになる事はなかったため、本当の意味でお年玉を貰うことは一度もなかったのだった。