何かとてつもなく嫌な事があった時、スッキリする方法は人それぞれだと思う。
私の場合は、とにかく早く寝る一択なのだが、職場の同僚達は富士山に登ったり、スカイダイビングで飛行機から飛び降りたりと華麗なる方法でスッキリしているようだ。
そんな中、H子から聞いた話が凄かった。
H子が二十歳の頃だから、もう30年以上前になるのだが、海外旅行に行くために初めてのパスポートを取ったのだという。
正確には、パスポートを申請するために戸籍謄本を取ったのだ。
すると、そこには自分が両親の実子ではなく養女である事が書かれてあったのだという。
「もし、私が中学生や高校生ならグレるっていう選択肢があったと思うねんけど、20歳で既に働いていて今更グレる訳にもいかないしさー。」
それでH子は髪を切るという古風な方法をとった。
ただ、髪を伸ばしていたので前髪だけを自分で切ることにしたのだという。
ここでH子はハサミの選択を間違った。普通の文房具用のハサミではなく布を切るための大きな断ち切りバサミで前髪を切ったのだ。
ハラリと落ちるはずの髪ははバサっという音とともに横の髪の毛が足元に散らばった。パニックになったH子は反対側も同じように切ったため、耳の後ろまでが全て前髪という見たことも聞いたこともない髪型になったという。
この大惨事にH子は養女であることなど大した事はない!この髪型をなんとかしたいと思ったがどうにもならず、そのまま髪を伸ばし続けたらしい。
養女の件がどうでもよくなったという点では、荒療治だが良かったのかもしれないか、なぜ美容院に行かなかったのかは謎である。