前回、実家で昔飼っていたわがままでちょっとおバカな犬の話をした。その犬を叔父さんから譲り受ける時の条件は一つだけ、『オスである事』だった。
オスだと言われて渡された子犬を連れて病院へ行った時に初診申込書にオスと記入したのだが、犬を見た先生が
「あれ?この子メスじゃないかな?」と衝撃の発言をした。
母はビックリして
「そんな事絶対にありません!オスって言われたからもらったんです‼️」と先生に詰め寄ったため、メスだと捨てられてしまうと思ったのか
「ふーん、じゃあオスかもね。まだ子犬だからわかんないけどね」とあっさり前言を撤回してカルテにもオスと記入してくれた。
そもそも、その道のプロがオスとメスという基本的な事を見分けられないはずがないのだが、オスであって欲しいという願望がそれ以上の追求を阻み、家族全員がモヤモヤしながらもその事について語る事は我が家のタブーとなった。
しかし何年かたったある日の事である。
家の離れで寝ていた弟が、キュンキュンという犬の鳴き声で目を覚ました。
離れの入り口に置いてある段ボールの中で犬がしきりとお腹を舐めていた。
「どうした?お腹痛いんか?」
弟は常備していたビオ○ェルミンを犬に飲ませた所にゅるんっと犬のお尻から黒い塊が出てきた。
しかもその塊は動いていた。
弟は頭が真っ白になり、その塊を凝視していると、さらにもう二つ塊が出てきたのだ。
弟は両親が寝ている母家に走り
「起きろ!子犬が生まれた‼️」と怒鳴った。両親は飛び起き大騒ぎになった。母などは
「こんなふしだらな娘に育てた覚えはない!」と犬に向かって怒っていたが、そもそも息子として育てていたがなと私は心の中で思っていた。
庭で放し飼いにしていたものの、聖母マリアでもあるまいし、なぜこんな事になってしまったのかと家中を調べると庭の隅に通っていた側溝から家の外に出ては近所の野良犬と青春を謳歌していたらしい。
家族全員が、その事に気がつかなかったばかりか、妊娠している事にも気が付かないとはマヌケもいい所だ。長年棚上げされていた愛犬の性別問題はこうして火を見るより明らかな事実を持って決着したのだった。