私が小学校の時、「こっくりさん」という遊びが流行った。五十音、はい、いいえを書いた紙の上に10円を乗せて複数の人間がその10円玉の上に人差し指を乗せてこっくりさんを呼ぶとその10円玉が動き出し色々な質問に答えてくれるのだ。いわゆる降霊術なのだが、小学生なので本人がいる前で「〇〇ちゃんの好きな人は誰ですか?」と聞く子がいたりする。すると、スルスルと10円玉が動き出し、クラスで人気の男子の名前のひらがなの上で止まり、え?と思って〇〇ちゃんを見ると真っ赤な顔をしてコクリとうなづいたりするのだった。そういう経験から私のこっくりさんへの信頼は絶大なものがあった。

私の父方の祖母は裏庭に住んでいて、ご飯を食べるときはわざわざ外に出て祖母を呼びにいかなくてはならなかった。それは私と弟の役目だった。始めはジャンケンなどで決めていたのだが、こっくりさんが流行りだし、こっくりさんに決めてもらおうという話になった。はじめのうちはこっくりさんは、いい感じで私と弟を順番に指名していたのだがある日を境に私ばかりを指名するようになった。こっくりさんの言う事は絶対で、言う事をきかないと祟られると思っていた私は黙って祖母を呼びに行っていた。しかし、さすがに何日も祖母を呼びに行く役目に私を指名するので、「ええっーなんで?」と私がブーブー言うとそれにも

『このごろおとうとばかりだから』とこっくりさんは生真面目に答えてくれるのだった。

10年近く経った頃、弟とこっくりさんの話になった

「あの時はホンマに不思議やったわー。私ばっかりおばあちゃんを呼びに行かされて、なんでやねんって思ってたけど」というと、弟は吹き出した。

「あれ俺や!俺が動かしてたんや。」

「え❓」

私は理解が出来ずにマジマジと弟の顔をみた

「ずっと信じてたとはビックリやな」

「ええっー⁉️」

あろうことか私は10年以上も実の弟に騙され続けていたのだ。

当時3歳年下の弟は、小学校低学年だ。

騙した事をそのまま種明かしもせずに貫き通し、祟りも恐れぬ所業に末恐ろしいやつだ、今にバチがあたると思ったが、特に何もなく普通のおじさんとして今も元気に過ごしている。

ちなみに、こっくりさんはあまりに流行りすぎて

高学年の中でトランス状態におちいる生徒がでて禁止になってしまったのだが、夕焼けに染まる教室の片隅でみんなでこっくりさんを呼び出すときのドキドキと背徳感はいい思い出として私の中に残っている。(弟には騙されていたけどね😅)