ツクツクボウシが鳴き始めると私は落ち着かない。

なぜなら大阪ではツクツクボウシは夏の終わりに鳴くからだ。もっと具体的にいうなら夏休みの終わりだ。私は何事も切羽詰まらないと出来ないタイプで、それは小学校の頃から変わっていない。

始業式まであと5日という段階になっても夏休みの宿題はほぼ手付かずの状態が毎年の事だった

その頃になってやっと両親も子供の緊急事態に気がつき何故こんなことになっているんだとギャーギャー怒るのだが、もう怒っている時間も惜しいと私の宿題の割り振りが始まるのが毎年のパターンだった。私の担当は(そもそも全て私の担当なのだが)漢字の書き取りと算数。父が工作。母が自由研究と絵日記の下書きだったように思う。そもそも一ヶ月以上もある夏休みの間の出来事など覚えているはずもなくほぼ架空の出来事なのだが、天気だけはと母が図書館まで天気を調べに行っていた。

私の子供の頃の夏休みの思い出は花火でもお祭りでも海でもなく家族全員で締切に追われる夏休みの宿題というのもなんだかなぁという感じだ。

そして、始業式までのタイムリミットが迫るなか泣きながら宿題をする私の耳にいつも聞こえていたのはツクツクボウシだった。その鳴き声は今でも早くしろ早くしろと私を急き立てる。