今年80歳になる義母は3階建ての家に一人暮らしなのだが、いつ行ってもびっくりするぐらい片付いている。片づけられない女の私はどうやったらこんなに片づけられるのかと常々不思議に思っていたのだが、このほどその理由が判明した。

義母は捨てる人だった。

今年のお正月に夫の実家に帰った時の事だ。

昨年7回忌を迎えた義父の話をしていた時に義母が

「お父さんは手帳に細かく色んな事を記入していたわ。パチンコで勝った金額とか体重とかちょっとした日記みたいな感じで。読んでいるとそういえばそういう事もあったかなと思い出してね」としみじみ言うので私も

「そうですね。お父さんの形見ですね。」としみじみ答えるとお母さんはきょとんとして

「形見?もう捨てたけど?」と言ったのでびっくりした。

「ええっ!?捨てたんですか?なんでですか?それはダメでしょう」

「なんで?お父さんの日記で私のじゃないし」

「いや、思い出ですやん」

「それを言うなら年末に大量の写真が出てきたから」

「ああ、まぁ写真があればね」

「全部捨てたってん」

私は今度こそ驚愕した。

「なんで捨てたんですか!?それは絶対捨てたらあかんやつですよ!」

「ツアーで旅行した時の写真が多いし、知らない人も写ってるやん」

「それはそれでどこに行ったとか思い出しますやん」

「今から行くなら楽しみやけど、過去やし思い出してもねー」

「家族の写真はおいてるんですよね!?」

「いや捨てた。お父さんの写真はほら仏壇にあるし、息子はまだ生きてるし」

80歳になってもなお、思い出に浸ることなく今を生きる義母。

それにひきかえ思い出にしがみつき物が捨てられない私。さすがに写真はまだ捨てる勇気がないが、写真に比べれば他のものは捨てられるのではないだろうか?

今年こそ義母にあやかり断捨離をしようと心に決めて夫の実家を後にした私だった。