友人のU子がある日

「なぁ、幽体離脱ってしたことある?」と聞いてきた。

「なんやの。そのバンジージャンプしたことある?みたいな聞き方は。普通はないやろ」

と答えたら

「私の友達はあるねんて」というではないか。

詳しく話を聞くと、U子の友達がある日寝ていたところ、トイレに行きたくなって起きたのだという。用を足して洗面所で手を洗ったのだが、その時に洗面台の鏡をみると自分の姿が写っていなかった。え?と思ったがどうしようもないので、もう一度寝てしまえと思って寝室に戻ったところ、ベッドに寝ている自分を発見したのだという。

「ええ?それからどうやって自分の肉体に戻ったん?」

「さすがに寝室の入口で茫然としたまま突っ立っていたら、ベッドに寝ていた自分がむくっと起きてあるいてきて自分にぶつかったと思ったら戻ったらしいよ。」

「うわっ!今鳥肌たったわ!それリアルやなー」

私はすごい話を聞いたと思って勇んで家に帰って弟にその話をした。

驚くとおもいきや弟は「俺の友達も幽体離脱したって言ってたで」というではないか。

 

弟の友達は、目が覚めて上半身を起こして後ろをふりむくとまだ自分が寝ていたらしい。

ここまではU子の友達の件もあるのでありえるかもしれない話だ。弟の友達がすごいのはここからでその時点で彼は

『おおっ♡これが噂に聞く幽体離脱かー』と感動したらしい。

そして

『もしかして、俺の姿消えてんじゃね?色々とやりたい放題なんじゃね?しかも空とかとべちゃうんじゃね?』と思うとウキウキしてしまい

「わーい!」とおもいながら一気に自分の身体から離脱しようとしたのだという。

ところが!である。世の中そうそううまくいくものではなく、なぜか彼の幽体は足の親指のところでつながったままどうしても本体から離れなかった。結局本体につながれたまま、一歩も動けず、最終的には寝てしまい、次に目覚めた時には元に戻っていたらしい。

離脱しようと思って悪戦苦闘している姿を想像すると笑えるが、離脱して元にに戻れない場合もあるだろうから、恐怖心のない彼は完全幽体離脱ができなくて結果的にはよかったのだろう。それにしても、不思議な話はあちこちに転がっているものなのだなぁと思った。