Eさんはチャーミングな先輩だった。

当時、Eさんは30台後半だったと思うが、少女のような雰囲気をもっていて

「ああん、どーしよー」と言われると先輩なのに守ってあげたい気分になるのだった。

Eさんの趣味は、なんちゃってダイエットで常に色んなダイエットに挑戦していた。

決して太っているわけではなく、中肉中背でふわふわとした雰囲気が魅力的だったのでダイエットなんか必要ないのではと思うのだがEさんは

「ダイエットしなくちゃー」といいながら色んな本を読みあさっていた。

 

ある時Eさんは、「私、最近食べ放題にハマっているんだよね。」と言い出した。

ダイエットしているのに食べ放題?聞き違いかと思ったが念のため

「ダイエットはやめたんですか?」と聞くと

「ううん、してるよ。今はテープダイエット。おへその周りに四角くテープを張ってるねん。

そしたらツボが刺激されて食欲がなくなるらしいねん。でも食べ放題の時には、いっぱい食べんと損やから、テープははがしているから大丈夫!」

それは全く大丈夫じゃないですよね?と思ったが

「明日は食べ放題の日やから、テープはがさなくっちゃー」とウキウキしているEさんに水を差すようなことは言えなかった。

 

案の定Eさんは

「ダイエットしているのに、むしろ太ってきた」と言い出した。

それは、食べ放題で元をとろうとして食べ過ぎているからですよと思ったが先輩なので黙っていた。

するとEさんは

「究極のダイエットを思いついた。交通事故にあえばいいと思う。」と突拍子もない事を言い出した。

「どういう事ですか?」

「かっこよくてすごいお金持ちの人の車にひかれて意識不明の重体で3か月入院するねん。目覚めた時には食べてないからめちゃくちゃ痩せて綺麗になってると思えへん?しかもお金持ちの人が「申し訳ありません!こんなことになったあなたの事は僕が責任とります。」とか言ってくれてさー」

「そんな事いいますかね?」

「言わなくても、お金持ちやから慰謝料でお金は絶対いっぱいくれると思うねん。寝ている間にダイエットできるし、お金はもらえるしすごくない?」

Eさんは、バンバンと私の方をたたきながら一人盛り上がっていた。

いやいや、それは究極のダイエットではなく「当たりや」という立派な犯罪行為ですよ。究極のダイエット、それはもう断食しかないですよ。

そう思ったがやはり目をキラキラさせて語る先輩に何も言えない私だった。