大分市立美術館で開催中の
「ロートレックとベル・エポックの巴里 1900年」
を観に行った。
有名なポスターが並ぶ。
ロートレックらしい特徴がある作品。
ポスターや劇場のプログラムなど、当時の日常生活の中にロートレックの描くものが存在していたことが伝わる。
エスタンプ・モデルヌ
この美術展で学んだことの一つは、この時代の美術作品の市民層への広がり。
例えば、この「エスタンプ・モデルヌ」という雑誌。
絵画作品入りの月刊誌だ。
1897年~1899年の2年間発行され、
毎号4枚の版画作品が収められていた、とある。
つまり、
2年間(24か月間)、毎月4枚だから計96枚。
それに特別版の4枚を加え、合計100枚。
毎月の購読で、最終的に100枚の版画作品がコンプリート、ということになる。
すごい。
美術作品の頒布販売に需要があったということよね。
豊かな世界だ。
まさに、ベル・エポック。
成熟した市民生活があったんだな。
作家は、既に有名だったミュシャのようなベテランから、駆け出しまで、97名。
購読者は色々な作品に触れられるし、お気に入りを見つけるのも楽しかっただろう。
毎号ワクワクして待っただろうな。
今回、この100枚すべてが展示されていた。
現代に生きる私は毎号の発行を待たずとも、一日ですべてを観ることができた。
ありがたい。
記念すべき創刊号は、これ。
左上の女性の版画とか、右下のおばあさんとか、いいな、好きだな、と思った。
(それぞれ、ジラルドの「リフ人の女」、マルテストの「靴紐売り」)
第3号。
これは第4号。
どれも良い。
第20号。
と、こんな感じで、知らない作家のものをたくさん観られた。
作家名を検索してみると、私が知らないだけで、多くはWikipediaに記載があったり、作品がヒットする。
そんな風に興味を広げて調べてみるのもとても面白い。
また、一覧してみることで、その時代の好まれる傾向などを感じることもでき、興味深かった。
チャズ・ラボルト
展示の後半、同時代の作家として、チャズ・ラボルトという人の作品があった。
初めて観たのだけど、とても好きになった!
展示してたのは、
1926年に刊行された、「パリ、街の素描」という133部限定の作品集に収められた20点。
パリの風景や風俗を描いたエッチング。
大きなリボンをつけた女の子達がとても可愛い。
↓澄ました顔のご婦人たちに混じって、
お腹ぷっくりの女の子や、人形を抱いて上をポカンと見上げる女の子。
↓画面の上半分は、様々な形のお洒落な帽子の波、
下半分は、せかせかと急ぎ足の靴。
断髪のかっこいい女性。
ヴェールの女性。
ワンちゃん。
私が惹かれたのは、この男の子。
めちゃめちゃ可愛い
ランドセルにボウタイにベレー帽?
決まってる~。
澄まして急ぎ足でどこ行くのさ。
女性の足元の犬も可愛いな。
チワワ?
細かくみっちり描き込まれていて、飽きない。
見れば見るほど、発見があって面白い。
夫から強く誘われた展覧会で、最初は気が進まなかったけど(またw)、結局夢中で観た。
実は私と夫、この春にミュシャ展にも行っている。
でも、正直、構成的に私はあまり面白くなかった。
(ので、ブログにもしなかった)
展示はきれいだった。
故郷チェコに対するミュシャの熱い気持ちもよく伝わった。
でも、展示がミュシャ作品しかないゆえに、「他と比べてどうなんだろう?」という気持ちが残った。
また、作品数が多く、観るには観たけど、熱狂的なファンでない私にはトゥーマッチだったかな。
今回の展覧会は、ロートレックに終始せず、同時代の作家の作品も多く見ることができたので、時代性もよく見えたし、他と比較することで、ロートレック作品自体の特性も立ち上がって見えてきた。
発見がたくさんあって、面白い展覧会だった。
大分市立美術館は、コレクションも充実している。
あまり時間はなかったのだけど、4部屋の常設展もできるだけしっかり観た。
高山辰雄、高倉観崖、福田平八郎、佐藤敬など、大分出身の画家中心。
平野遼も今回は一点観られた。