電車の中でこういう光景を見たことがある

可哀想でもあり、
懐かしい感触味わっている
センチメンタルな光景
その引きこもり登山家に
「足の親指の爪けっこう巻き爪になってますよ」

と言われ、
確かに私はかなり巻き爪になっているが、いきなりそれで話しかけられると焦るものである。

しかも、話しかけてきた引きこもり登山家はけっこう気持ち悪いのである。

それに電車内にはけっこう人が乗っているにも関わらずの彼の行動に少し苛立ちも覚えた。

そして私はお人好しではないので、
初めてそこで、気付いたふりをして、
「あっ、本当だ!巻き爪になってるー!」
なんてことは言えない。
もう自分の足の親指は巻き爪だと言うことを把握しているので、

「知ってます」

と答え、ケータイを打ち続けた。

すると、また引きこもり登山家は自分の財布をなにやら出しはじめて、

「巻き爪になったら何かしてますか?」

と言いながら、財布をごそごそしているではないか。


私はもしかして、この引きこもり登山家は医者で、
「こう言う者なので、ここで治せますよ」
と言うのではないか、
あわよくば、あわよくば
「これで巻き爪を治してください」
と、現金を渡されるのではないかと
財布に目が釘付けになった。

私は何ともえげつない人間である。

すると、引きこもり登山家は私の期待を裏切るかのような物を出してきた



「これ、親指の爪に巻いてあげますよ」

とスッと差し出してきたのは、
なんとかレンジャーの赤がプリントされた絆創膏だった。

エーーーーーーー!!!


巻かせるかーーーーーー!!!


正直、私のキャパを越えていた。
まさかの展開である。

絶対に巻かせない。
巻かせるのを任せない。
どうでもいいが、これはやばいと思い、そして、巻いてる爪に何巻いたって巻くので、

「私、ネイリストなんで、ほっといてください」これは本当である。


と言ったら、引きこもり登山家は何も言わず、その場を去っていった。

私の目の前に座っていた男子大学生達は、なにあれみたいな目でチラ見してきたが、変態なのは引きこもり登山家で、私ではない。


今でもたまに、あの時、ほっといてと言わず、
「あっ、じゃあ巻いてください」
と言っていたらどうなっていたんだろう。
と言うことにも興味がある。

あっ、違うか、「まかせる」か

これは去年の秋口にあった話。

夕方に電車に乗って吊革に捕まりながら、ケータイを打っていたら、

自分の側に人が近づいてきたのがわかった。

すると私の斜め前に立っていたおじさんAがスッといなくなった。




ていうことは、今近づいて来た人は、なんか変な人なのかなと思いながらも、気にせずケータイをいじっていた。


すると、その人にいきなり声をかけられた
「あの、すみません」

パッとその人を見ると、少し肌寒くなってきた頃合いなのに、Tシャツで、太っていて、メガネをかけていて、ハゲていて、髭面で、
一見、登山家の様な風貌なのだが、色がめっちゃ白いので、引きこもり登山家の様な30代ぐらいの男の人だった。


正直、心の中で、うわ…と思った。


すると、その引きこもり登山家は続けてこう言った
「足の親指の爪、けっこう巻き爪になってますよ」


つづく