予備R2 刑法 第2問 肢2
問題文
放火罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものを2個選びなさい。
2.甲が乙に頼まれて,乙所有の大型家具を,丙が居住する家屋に近接する甲所有の畑地で燃やし始めたところ,周辺に火の粉が飛び散り,予期に反して,同家屋の屋根のひさしに飛び火して,同ひさしを焼損させたところで火が消し止められた場合,甲には,延焼罪が成立する。
本肢を解くための思考過程
本肢は,延焼罪の成否の検討を通して,当該犯罪の構成要件の知識とその当てはめを問う事例形式の問題といえます。そこで,論文問題を検討する際の思考方法を用いつつ検討していきましょう
「前条第2項の罪を犯し」(111条1項)について,まず,「放火して」(110条1項)について,燃やし始めた行為は「放火して」に当たるでしょう。次に,「前2条に規定する物以外の物」について,大型家具は,当該要件に当たるでしょう。さらに,「焼損」について,周辺に火の粉が飛び散るほどに至っているから,独立して燃焼を継続するに至ったといえ,当該要件に当たるでしょう。そして,「よって公共の危険を生じさせた」について,周辺に火の粉が飛び散り,丙居住の家屋のひさしに飛び火するほどのものであるから,108条の物権に延焼の可能性があるものとして,当該要件に当たるでしょう。最後に,「自己の所有に係る」(同条2項)について,当該要件は,犯人以外の者の所有に係るものであっても,その所有者が放火を承諾した場合も含むとされています。したがって,上記大型家具は,乙所有であるものの,乙に頼まれている点で所有者乙の承諾があるといえ,当該要件に当たるでしょう。まとめると,「前条2項の罪を犯し」に当たるでしょう。
「よって第108条」「に規定する物に延焼させた」について,丙が居住する家屋のひさしは,「現に人が住居に使用」する「建造物」として,「第108条」「に規定する物」に当たるでしょうし,それに飛び火して,同ひさしを延焼させたことは「延焼させた」にも当たるでしょう。
延焼罪の故意について,甲には,110条2項の罪に該当する事実の認識認容はあっても,108条の罪に該当する事実の認識認容はないでしょうから,延焼罪の故意が認められるでしょう。
よって,甲には,延焼罪が成立するため,本肢は正しいものといえるでしょう。
分析と勉強方針
本肢は,延焼罪の各構成要件についての知識を正確に理解・暗記した上で,その当てはめをしなければ,正誤の判断ができない問題といえます。つまり,本肢は,単純に抽象的一般的な法律知識そのものを問う問題という面に加え,具体的事例へ当該知識を正確に適用する能力を問う問題であるといえます。
そこで,まずは,各犯罪について勉強する際,ⅰ構成要件要素は何か,ⅱ構成要件要素の定義は何かといった点について,条文の文言も含め正確に理解・暗記しておく必要があるということになるでしょう。
また,上記知識を具体的事例に正確に適用することもできるようになる必要があるため,事例問題の検討を通じた練習が必要ということにもなるでしょう。つまり,ここで,論文の勉強,すなわち,論文答案の書き方・頭の使い方を用いることになるといえるでしょう。
全体的にみると,本肢のような問題は,短文事例型の論文問題集として利用することもできますから,論文答案の書き方・頭の使い方を意識した練習をしておきたいところです。