<このお話の登場人物>

後輩:
 予備試験に合格した先輩の後を追って予備試験を目指す。先輩のすすめもあって,短期で効率的に勉強するため,アガルートアカデミーの予備試験1年合格カリキュラムとマネージメントオプション(ラウンジ)を利用することにした。
講師:
 アガルートアカデミー講師。主にマネージメントオプションのラウンジ講師として,日々受講生の指導を行っている。


―ある刑法の事例問題について,答案を作成し,添削を踏まえた指導の一場面のこと―

講師:
 君の書いた答案のこの部分なんだけれども,いわゆる早すぎた構成要件の実現の論点を論じているよね?

後輩:
 はい!

講師:
 それは論点を外してしまっているんじゃないかな?
 この問題の解説解答例でも取り上げられていないように,この問題では,早すぎた構成要件の実現の論点は登場しないと思うよ。

後輩:
 えっ!?論点外しですか!?なんでこんなことに・・・。
 論点を外すことがよくあるんですけど,どうやって対策したらいいでしょうか?

講師:
 じゃあ今日は,論点外しを起こさないための対策について考えてみよう!
 まず,そもそも,早すぎた構成要件の実現の論点を論じようと思ったのは,どうして?

後輩:
 えっと・・・,問題文には,「第1暴行」,「第2暴行」と記載されていて,しかも,甲(第1暴行,第2暴行を行っている者で,設問において罪責を問われている者)は,V(第1暴行,第2暴行を行われた被害者)が死ぬと思ったからです。
 早すぎた構成要件の実現の論点も,例えばクロロホルムを吸引させた事例(最決平16.3.22参照)で,第1行為,第2行為って言葉が出てきて,殺そうと思ってたという事案だったと思うので,それなら本問でも論点になるなと思って・・・。

講師:
 なるほど・・・,君がどうして論点外しをしやすいのか分かったよ!
 原因は大きく2つあるね!
 1つ目は,典型論点や基礎知識,本問でいえば早すぎた構成要件の実現について,それが問題となる具体的事例が何か,当該論点の問題の所在は何か,といった点を正確におさえられていないことだ。
 2つ目は,本問の事実関係を正確に読み取っていないことだ。

後輩:
 えっ!?自分としてはできているつもりだったんですけど・・・。
 よろしくお願いします・・・。

講師:
 まず1つ目について見てみよう。
 早すぎた構成要件の実現が問題となる具体的事例を確認してみよう!
 総合講義のテキストにはどう書いてあるかな?

後輩:
 えっと・・・
 「甲はAにクロロホルムを吸引させ昏睡させた(第1行為)後,自動車に同人を乗せ崖から転落させる(第2行為)ことで同人を殺害しようと計画した。甲はこの計画を実行に移したが,Aはクロロホルムを吸引した時点でその薬理作用によって死亡していた」
 ・・・と書いてあります。

講師:
 そうだね!
 それで,この事例の何が問題なのかな?

後輩:
 えっと・・・,第1行為の時点で殺人の実行の着手が認められるかだと思います。

講師:
 そうだね,ただ,なぜそのような問題が生じているんだろう? 

後輩:
 えーとー・・・。

講師:
 具体的にイメージしてみよう!
 まず,第1行為を行っている甲は,第1行為に殺人の実行の着手が認められるとの指摘に対して,何か言いたいことはないのかな?

後輩:
 自分(甲)は,第2行為によってAを殺すつもりだったのであって,第1行為でAを殺すつもりはなかった,それなのに,第1行為が殺人の実行の着手と言われるのは納得がいかない,という感じでしょうか?

講師:
 そうだね,きっと甲は,そういうことを言いたいと考えるだろうね!
 では逆に,第1行為に殺人の実行の着手が認められるはずだと指摘している検察官側は,何を言うだろう?

後輩:
 えっと・・・。
 全体としては,Aを殺そうという計画を実行しており,その計画の一環としての行為である以上,第1行為は殺人の実行の着手というべきだ,みたいな感じでしょうか?

講師:
 そんな感じだね!
 まとめると,Aを殺すため,直接Aを殺す行為となる第2行為と,第2行為の準備のためであって直接Aを殺すわけではない第1行為を計画内容とし,第1行為を行ったらAが死亡してしまった,そこで,第1行為の時点で殺人の実行の着手が認められるかということになるだろうね。
 まずはここをしっかりおさえておこう!

後輩:
 はい!

講師:
 次に2つ目について見てみよう!
 ポイントは,今みた1つ目のまとめ方と同様の指摘ができるような事実関係になっているかどうか照らし合わせるイメージで事実関係を丁寧に把握することだ!
 さて,どうなるかな?

後輩:
 えーと・・・,第1暴行と第2暴行を行っていて,死ぬとも思っていて・・・1つ目のまとめ方と同じような気もするのですが・・・。

講師:
 事実関係をよくよく確認してみて!
 まず,第1暴行をしているのはどういう理由なのかな?

後輩:
 貸したお金を返してくれない腹いせとして暴行をしています。

講師:
 ということは,死んでもいいと思っていると断定できるかな?

後輩:
 いえ,できないです!

講師:
 そうだね!
 では,第2暴行の時点ではどう思っているのかな?

後輩:
 第2暴行を行っている時点で,死ぬかもしれないと思っているみたいです。
 ・・・あっ!ということは,そもそも,殺そうという計画を立てて,第1暴行,第2暴行を行っているわけではないということですか?

講師:
 そう!そうすると,1つ目のまとめ方と同様の指摘はできない事実関係ということにならないかな?

後輩:
 たしかに・・・,問題文の事実関係をよくよく読んでみると,早すぎた構成要件の実現が問題になる事例とどんどん違うように見えてきました(笑)。

講師:
 そう(笑)。つまり,目の前の具体的な事実関係を,正確に,丁寧に,把握することは非常に重要だといえるね!
 最後にまとめておこう!論点外しをしないためには,
 まず,典型論点・基礎知識が用いられる具体的事例を,何がどう問題になるのかという問題の所在も含め,正確に理解・暗記しておこう!
 その上で,目の前の事例問題の事実関係を,正確に,丁寧に把握しつつ,問題の所在とおりの指摘をすることができるかどうか確認しよう!
 問題の所在とおりの指摘ができないのであれば,当該論点を論じることを求めている問題ではないということになるね!
 結局は,基礎知識を正確にインプットする,問題文を正確に読むという一言でまとめることもできるね!

後輩:
 なるほど!わかりました!

講師:
 そして,あとは,すべての典型論点・基礎知識について,具体的事例と問題の所在を正確におさえ続ける勉強をしていけば,インプットとしては万全ということになるから,そこは引き続きがんばっていこう!

後輩:
 はい!ありがとうございました!!


アガルートマネオプの日々~論点外し対策を考える~ おわり