いざ見始めたら、3分の1ぐらいたったところでウトウトと。
おもしろくないとか、そういう眠気じゃなかったので、あ、これはやめた方がいい、と寝ることに。
今、改めて考えると、あそこで寝たのは正しい選択だったな。
あのまま観てても、ちゃんと内容に真剣になれなかっただろうし、そのあとに書く文章もきっとウトウトしそうなものになっただろう。
眠いときに変に抵抗するのは、メリットないね。
「ピエロがお前を嘲笑う」のレビューで予告した通り、映画館まで観に行ってきました。
ギルティ
アーノルズはせがわさんのTwitterでこの作品を知って、「これは観てみたい!」と思って観に行ったんですが、
劇場出た後もしばらく言葉が出てこなくなるほど、ずっしりと響くすごい映画でした。
3.6点/5点
緊急通報電話がつながる指令室で働く、主人公のアスガー。
酔っ払いの対応や、交通事故処理など、些細な事件に淡々と応対を行う日々を過ごしていた。
そんな業務も明日まで、といったことが語られる中、女性から一本の通報を受ける。
酔っ払いのイタズラのような電話だったが、どこか違和感を感じるアスガーは慎重に相手の状況を確認していく。
「誰かと一緒にいる?」「イエス」、「一緒にいる人は緊急ダイヤルにかけていることを知ってる?」「ノー」
「あたは誘拐されている?」・・・・・・・・・・、「イエス」
電話口から得られるのは言葉と音だけ。その限られた情報だけを頼りに、アスガーは今まさに誘拐されている彼女を救うことができるのか!
というのが本作のあらすじ。
サンダンス映画祭観客賞 受賞という業績や、限られた情報をもとに謎解きを進めていくというシチュエーションといい、
昨年観て絶賛した「search/サーチ」に似ているところが多い本作ですが、いやぁこの作品もすごかった!!
本作の一番の特徴は、「アスガーも、映画を見ている私たちも、聞こえてくる音以外に情報がない」ということ。
電話口の声の主はどんな顔をしているのか、向こうの状況はどうなっているのか。聞き取った情報から想像するしか方法がないわけです。
監督のグスタフ・モーラーが「音声というのは、誰一人として同じイメージを思い浮かべることがない、ということにヒントを得た。観客一人ひとりの脳内で、それぞれが異なる人物像を想像するのだ」と語っていましたが、まさにその思惑通りにしてやられました。
電話越しの声と、アスガーの表情と、たったそれだけの映像にもかかわらず、アスガーの独善的な行動にいらだちを覚え、聞こえてくる音に耳を澄ませ、電話が切れるたびに不安になり、ずぶずぶと沈み込むように映画の中に没入させられてしまっていました。
事件の結末と、あのラストシーンとを見終わって、エンドロールを眺めながら感じた後味や余韻は、すごくずっしりと重く、筆舌に尽くしがたいのなんの。
正直、なんども観たいな、とは思わなかったんですが、あの緊張感と想像力を委ねられた濃密な時間は、体験できてよかったと思います。
う~ん、フォーン・ブースといい、サーチといい、こういう限られた環境で進んでく作品。僕はなんか好きだなぁ。
ここから先は、ちょっとだけネタバレが含まれます。
まだ観ていなくて、観てみようか迷ってる人は読まないでください。
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事件の真相自体はショッキングではありましたが、この作品の中心はやっぱりアスガーでした。
元ボスや、元同僚とのやり取りから、軽く語られる過去にあった”何か”から、アスガー自体の影が匂ってくる。
緊急通報指令室の業務範囲を超えてまで、無理やり捜査を行おうとする、アスガーの行き過ぎた行動。
誘拐事件の謎へ引き込まれる一方で、どこかアスガーに共感しきれないので、アスガーよりも一歩引いた視点から見たくなってしまう。
事件の全容と、アスガーの過去の”何か”が明らかになることで、この絶妙なモヤモヤが明らかになっていく様は、本当にすごかった。(語彙力が足りない…!)
その紐解きの象徴が、「赤いライトに照らされるアスガー」
この演出が、本作の一つの転換点なんだ、と見終わった後に考えさせられました。
事件の解決後、どこかに電話を掛けながら指令室を後にするアスガー。
決して許されることのない過去の”何か”を自ら明かしたことで、彼が元の職場に復職することは決してなくなったでしょう。
一方で、自分のエゴに面と向かい合ったことで、彼が気付いたことは非常に大きな一歩だったことも確か。
開きかけの扉の隙間から漏れる光に包まれる彼に待つのは、救いなのか、それとも絶望なのか。
この結末に打ちのめされながら、エンドロールを眺めていた僕は、改めてタイトルの「ギルティ(有罪)」の意味を噛み締めました。
本当に、深く深く、重く響くすごい作品だと思います。
後味の悪さのせいで、「search/サーチ」よりも評価の点数が低めですが、そこは本当に好き嫌いの差ですね。