映画館でみてからなので、だいぶ久々にちゃんと見たんですが、本当に最高の映画です。
「ダンケルク」

ダンケルクの戦いどころか、ダンケルクなんて地名すら知らなかったのですが、「ローグワン/スターウォーズストーリーズ」が始まる前に流れた、あの5分間の濃密なプロローグに心を奪われました。
桟橋や海岸にひしめくように並び船を待つ兵士たちと、その兵士たちに迫る戦闘機が迫る音。そしてプロペラ戦闘機同士のよるドッグファイト。
たったそれだけ、たったそれだけにもかかわらず、目に血走るぐらいに緊迫感が高まっていくのが伝わってくる・・・。
そして、しゃがむ兵士たちに戦闘機の音が近づききった瞬間、タイトル表示もなにもなく、急にプロローグが終わってしまいました。
「なに?何の映画の予告!?」って気持ちと、「これは絶対に映画館で観ないと!」って気持ちで、気になってしょうがなかったのをよく覚えてます。
そして、公開してすぐに映画館に観に行って、「映画館で観てよかった!」「あの予告編で知ることができてよかった」と心底思ったのを、見直しながら改めて思い出しています。
強烈な記憶に残るところが、名作たりうる理由と言っていいでしょう!
ダンケルクの戦い自体は、第二次世界大戦で実際にあった出来事です。
ナチスドイツ軍の猛烈な侵攻に、パリは陥落。フランスのダンケルク海岸に包囲され、追い詰められたイギリス、ベルギー、カナダ、フランスから成る連合軍将兵。
イギリス本国が自国の兵士を救出すべく、貨物船、漁船、遊覧船も徴用した作戦、これがダンケルクの救出作戦です。

※ナチスドイツ軍が戦意をくじくために空からばらまいたチラシからも、その包囲状況が見て取れます
本作は、「ダンケルクの海岸で追い詰められた兵士の1週間」「救出のためにダンケルクへ向かう、民間船クルーの1日」「ドイツ軍の戦闘機を迎撃するべく出撃したパイロットの1時間」の3つの視点から描かれてますが・・・、違う時間軸の視点を交互に描いてるので、そのことに気付いて理解するまで、観ながらちょっと混乱します。
メメントにしろ、プレステージにしろ、インセプションにしろ、この時系列のわかりづらさは、クリストファー・ノーラン監督の特徴って言えば特徴ですが、むむむむ。 プレステージは好きだけど。
ただでさえ分かりづらいうえに、それぞれの視点の説明が「1.THE MOLE(防波堤・波止場)/one week」「2.THE SEA(海)/one day」「3.THE AIR(空)/one hour」だけって。最初、リミットだと思ったら、描いた期間だったっていうね。
映画館で観てた時は、30分ぐらいはそれぞれが違う時間軸で描かれてることに気付きませんでした。その分、気付いた瞬間から一気に面白くなってきましたが。
ということで、本作もノーラン節さく裂な「難しい映画」になってるので、好き嫌いがはっきりでるんじゃないかなぁ。
ただ、僕は「そぎ落とされた要素による、戦場という世界の臨場感」に引き込まれ、この作品を絶賛します。
この作品では、登場人物のキャラクターの掘り下げは全くと言っていいほどありません。
陸で生き延びようとあがくトミー、戦闘機をかるフィリオやコリンズ、自身の小型船でダンケルクへ向かうドーソン親子とジョージ。どんな過去があってとか、どんな性格でとかは語られていません。そもそも劇中じゃほとんどのキャラが名前で呼ばれないし。
作戦会議もなければ、リミットを告げるカウンターもない。
戦争映画では悪として描かれがちな敵に関しても、出てくるのは戦闘機と爆撃機、そして飛んできた銃弾の弾痕。最後に一瞬兵士が映りますが、顔は全く見えない状態と、ドイツ兵という人の要素もバッサリ描かれず、一体どこまで迫っているのかもよくわからない。
劇中曲も、印象にのこるのは、緊迫感をあおる「時計の音と一つの音が次第に大きくなる」ものばかり。ハンスジマーっぽくない。
そんなこんなで、いろいろそぎ落とされているので、「戦争は悲惨なんだ」的なプロパガンダも、ドラマ性すらも薄い、というか”ない”に近いです。そこにあるのは、映し出された映像と緊迫感だけ。
普通、映画とかの作品は、「誰かに感情移入して、その人の気持ちになる臨場感」を味わうことで、楽しめるものだと思います。
でも、本作では逆に、感情移入できる相手もなく、敵の姿も見えない。
感情が身を持たれる場所がないので、目の前にある映像を受け止めるしかない。だからこそ、「ただ自分がその場に立たされている」かのような、ピリピリとした臨場感を生み出しているんだと思います。
特に映画館でみると、スクリーンの大きさや音響の影響もあって、意識そのものを映像のなかに置いているような、そんな気分になれる。
本当に、見直してもその臨場感には、息をのむばかり。見終わった瞬間の充実感たるや、最高ですね。
ちなみに僕が好きなシーンは、名優ケネス・ブラナー演じるボルトン海軍中佐が、沖に救援の船たちを見つけたところですね。
「何が見えた?」と陸軍大佐に聞かれて、「Home(祖国だ)」って答えるときの、嬉しさと喜びがこぼれ出たような表情、もう何度見えてもグッとくるよ。

※このにじみ出てくる感じ、最高じゃない?
それと、「空軍は何してたんだ」って言われたコリンズに対して、ドーソン氏が「我々は知ってるよ」といって握手するシーンもいいよなぁ。
クリストファー・ノーラン好きなら必見。
最近「ヴェノム」に出演したトム・ハーディ好きや、キリアン・マーフィー好き、ケネス・ブラナー好きも必見。
どれにも当てはまらない人もやっぱりこの臨場感は一度見てもらいたい!!
できれば大きな画面で、ちょっといい音響使って。うん。
そのうえで、好き嫌いがでるのはしょうがないけど、それだけの価値は十二分にあると思いますよ!
さて、以前のブログからちょくちょく述べてるアベンジャーズ:エンドゲーム、いよいよ今晩、IMAXで観に行ってきます。
ネタバレしないようにするためにも、多分一晩自分の中で消化しないと、ブログに書けないと思うので、更新は明日かなぁ?
いやぁ、楽しみだわ~。
