なんてことない話しだけど、

定期診療の日、
病院の予約時間より早めについたので、
温かい飲み物が欲しくなった。

自販機の前に
少し年配のご婦人が
困ったように佇んでいた。

「どうしたんですか?」

おつりも出てきているけど、
「自販機の反応が無い」とおっしゃる。

もう一度ボタンを押してみたら?と私。

すると近くにいた病院の清掃スタッフの
おじさんが、
カップ取り出し口を指して、
「もうできてますよ」と教えてくれた。

古いタイプの自販機で
自らアクリルの小窓を開いて、
カップを取り出すという手順が必要なんだった。

次に私もコインを入れて
ココアのボタンを押すと
機械が作動してランプが点り
ランプは音もなくいつの間にか消える。
 
仕上がりの手ごたえがなくて、
なんだか不親切(機械だけど…)。

先ほどの女性に、
「私も自販機で買ってみたら、ピー音しなくて。
出来上がりが分かりずらいですね」と
話しかけて、少し離れた場所に座った。

しばらくして、その女性は立ち上がると
私の所に来て、
「話しかけてくれてありがとうございます」と
言って、検査室の方へ歩いていった。

少しボーっとした印象だったから、
病気の不安でもあったのかな。
病院なだけに、仕方ないけど。

知らない人同士だけど、ちょっとでも
言葉を交わしたら、場が和らぐ。

辛い時ほど心がほんの少し軽く
なるのが分かる。

私もありがとうございます。