「阪神2-1ヤクルト」(16日、京セラ)
その瞬間、虎党はしんと静まり返った。
ヤクルト・バレンティンが二回、
両リーグトップを独走する今季42号の先制ソロ。
豪快に、そして軽々と左翼席中段に放り込んだ。
「打ったのはフォーク。高めに抜けてきた変化球だったが、
大振りすることなくコンパクトなスイングで対応できた」。
能見の投じた5球目。
失投を見逃さずフルスイングした。会心の一撃だった。
今季出場89試合目で、42本塁打を量産。
単純計算で、驚異の62本ペースとなる。
チーム試合数の102試合で換算すれば、59本ペース。
いずれにしても、王貞治(巨人)、カブレラ(西武)、ローズ(近鉄)が記録した、
シーズン最多本塁打記録の55本を超える数字となる。
一昨年から2年連続で本塁打王。
昨季までは球宴後の失速もあって31本にとどまったが、
来日3年目の今季は、前半戦を32本で折り返すと、
後半戦も着実にアーチを積み重ねている。
55本のカベへの挑戦にも、
かねて「60発?ダイジョウブ」と話すなど、意欲は十分だ。
しかし、試合後の足取りは重かった。同点の八回、2死満塁の絶好の勝ち越しのチャンス。代わったばかりの安藤の高めの144キロ直球に空振り三振に倒れた。「打てる球を待ってフルスイングしたけど…」。先制アーチよりも、勝利に導けなかったことを悔いた。
それでも、代名詞のホームランが紡ぐ記録の行方は、誰もが気になる。