脳にエネルギーを補給する
脳もエネルギーなしでは機能しません。短期的に脳を活性化させるには、エネルギーの補給が唯一の確かな方法です。実はこれはとても簡単です。脳が第一に必要とするエネルギー源はブドウ糖ですが、ブドウ糖はほとんどあらゆる食品に含まれています。例えばキャンディを食べればすぐにハイになれます。より望ましいのは、ゆっくりと炭水化物(ブドウ糖に変換される)を含む食べ物を摂ることです。また、ブドウ糖のレベルを適正に保つために、いくつかのアドバイスがあります。
ゆっくり噛んで、血糖値を抑える
いくら良いものでも摂り過ぎはよくありません。血流中に25gのブドウ糖があることが脳にとってベストであり、それはちょうどバナナ1本に含まれる量と同じです。また、豆類、レンズ豆、全粒パスタ、エンドウ豆などを軽食で摂ると、脳が活動するのに適正なレベルのブドウ糖を補給することができます。
グリセミック指数を低く保つ
ゆっくり噛んで食べる以外にも、ブドウ糖のレベルを調整する方法があります。「グリセミック指数」を低く保つのです。グリセミック指数はその食品が血液中のブドウ糖レベルに影響を与える強度を表します。グリセミック指数が低い食品は血液中に穏やかにブドウ糖を放出し、脳に過剰な影響を与えません。ただし、食品はお互いに影響を与え合いますので、そのことも考慮に入れる必要があります。例えば、全粒パンとタンパク質を含む食品を一緒に食べた場合、ブドウ糖は時間をかけてゆっくりと放出されます。しかし、パンだけを食べた場合はブドウ糖はすぐに放出されていまいます。フランクリン協会は食品ごとのグリセミック指数 を公開していますので、献立を考える際の参考にしてください。
アミノ酸でエネルギーを補給する
「トリプトファン 」と「チロシン 」の2つのアミノ酸は、血液脳関門を通り抜けます。
トリプトファンは鎮静作用があります(睡眠導入効果があると誇張されることさえあります)。チロシンは私たちに活力を感じさせる物質です。体がタンパク質を分解すると、アミノ酸が作られます。魚、肉、卵、チーズやヨーグルトはアミノ酸の優れたソースであり、毎日の食事にこれらの食品のうち1つは取り入れるようにして、脳に必要な栄養素を補給しましょう。
以上、脳を毎日最適な状態で働かせることが前半の主眼でした。後半は、さらに興味深い事実を見て行きます。それは、食品には脳のダメージを修復する能力があるということです。
脳細胞を修復する
もしかすると、学校の授業などで脳細胞は生涯入れ替わることがないと習ったかもしれません。しかしこれはまったくの事実ではないようです。MITとプリンストン大学の研究によると、脳細胞もまた新しく入れ替わるということです。脳細胞は脳のスピードやワーキングメモリに深く関わっています。
Shukitt-Hale氏によれば、特定の食品は脳内の遺伝子発現を変更することができ、新しい脳細胞を作ることによって、脳神経同士の伝達力を増加させるそうです。魚やくるみに多く含まれる脂肪酸「オメガ3 」は、脳細胞の生成を助けると考えられています。毎日適切な食事と適度なエクササイズを組み合わせることで、脳細胞の再構築をサポートすることができます。
認知機能の低下を抑える

歳をとるほどに記憶と認知機能に問題が生じやすくなることは周知のとおりです。しかし対策がないわけではありません。その対策とは、認知機能に有害な影響を与えるフリーラジカルから脳を守ることです。フリーラジカルは、不均衡な酸素が酸化ストレスを作り出すときに生じます。フリーラジカルが発生すると脳の活動は、長期間の負荷を強いられます。しかし「抗酸化物質」を摂取すれば、脳が酸化ストレスと戦うのを助けてくれます。またいくつかの食品は脳を長期的に強化し、認知機能の低下を抑えてくれます。そしてさらには、短期的にも脳に好影響を与えてくれるのです。
抗酸化物質を毎日摂取する
抗酸化物質は脳細胞を破壊するフリーラジカルと戦ってくれます。Shukitt-Hale氏がベリー類(抗酸化物質を多く含む)に関する研究をしたところ、抗酸化物質は脳内の炎症を防ぐ効果もあるそうです。ベリー類は長期的に見て脳の働きを助けてくれることを示しています。ではどれくらい食べればよいでしょうか? 一日1カップが最適です。他にも、ほうれん草やブロッコリー、お茶などにも良質の抗酸化物質が含まれています。
週に一度は魚を食べる
魚はブレインフードだと言われています。魚にたっぷり含まれる脂肪酸は、脳細胞の再生に必要だと言われています。また、脂肪酸は認知機能の低下を抑える効果もあります。『Archives of Neurology』に掲載された研究によると、魚を食べると認知機能の低下を10%抑制してくれるそうです。しかし、別の研究によると、魚の油は「オメガ3ビタミン」のように特定の疾患に効くことはないそうですし、脳を活性化させるという証拠はまだないとのこと。その研究はまだ途上にあるといえます。
それでは、はたして認知機能の低下を防ぐための実証済みの方法はあるのでしょうか?
Wenk氏は認知機能の低下を長期的に防止するためにまったく異なるアプローチを提案しています。それは「食べ過ぎない」ことです。
私たちの体は長い進化の過程で獲得したバランスの上で機能しており、化学物質で一時的に脳機能を向上させようとしても限界があります。およそ10~15年前、我々は認知機能の強化を断念しました。なぜなら、脳は今のままで十分にスマートで処理速度も速いことがわかったからです。
たしかに少しばかり脳の力を底上げすることはできるかもしれません。しかし、それでIQがアップするでしょうかか? 答えはNOです。わかっている限り、認知機能の低下を抑える唯一確実な方法は食事制限です。大げさなことが必要なわけではなく、ただカロリーの30%をカットするだけです。これこそが寿命を長くし、脳を賢く保ち、病気にも打ち克つ唯一確かな方法なのです。
食べ物と脳の関係についての研究はまだ始まったばかりです。何が有効かいうアイデアはいくつか出ていますが、まだまだ解明されていないことも多く、発展途上の分野といえます。「ブレインフード」というアイデアは、限界を超えて脳を働かせるということではなく、脳が本来持っている力を発揮できるようにすることです。米国農務省のFood Plate
は脳の働きを助けるためのいくつかの提案をしています。ブレインフードがなぜ、どのように働くのかを知っておけば、ほうれん草を次の食事に入れるかどうかを判断しやすくなります。ブレインフードを食べたからといって突然頭が良くなるわけではありません。しかし、少なくとも長期的に脳をよりよく働かせることは可能です。あなたもブレインフードを試してみたいですか?